夏休みの学生旅行。しかし、帰途は全員揃わなかった。片や川で片や山と 状況こそ違うが、昨夏と同じ悲劇は起こった。
有栖川有栖「月光ゲーム」Yの悲劇 '88
税込価格: \609 (本体: \580)
出版:東京創元社
サイズ:文庫 / 361p
ISBN:4-488-41401-X
発行年月:1994.7
利用対象: 一般
氏のデビュー作であるこの小説は、江戸川乱歩賞に応募して落選し幾つかの出版社からも断られたのを鮎川哲也氏の口利きで?1988年に東京創元社から「鮎川哲也と十三の謎」の第四回配本として出版されたものである。
3つの大學4つのグループが夏休みにキャンプをする。その休火山が噴火することによって(いや、実際にはそれ以前から)起こる悲劇を描いている。
江戸川乱歩賞にもれ幾つかの出版社からも出してもらえなかったこのデビュー作は、しかし実に初々しい。どの作家のものでも初期のものはこうした傾向があるが、この本は今後有栖氏の作品でワトソン的存在になるアリスのデビューでもあり後の作品での人物像とどうしても比較してしまうからかもしれない。
探偵役の江神は魅力あるキャラクターだ。謎を秘めた学生という点では篠田真由美の桜井と共通点がないでもないが、桜井がかなりマンガチックなのに比べ 江神は冷静沈着でありながらある意味ごく普通の学生でもある。
マーダーゲームでスペードのエースを(内心のとまどいをポーカーフェースに隠しての)出した時のポーズなど想像するのも楽しい。
このあとの作品であまり登場しなくなるのが惜しい。と同時にアリスが歳を重ねていくのも何となく残念だ。後に主な探偵役となる火村にあまり感情移入出来ないせいかもしれない。
登場する17名の学生たちの描きわけが今一つわかりにくかったため、何度も[登場人物]欄を覗きに行かねばならなかった。これは単に、自分がその年代からあまりにも遠のいたからだろうか。いや、人物の個性書き分けにやや難ありと 敢えて挙げておこう。
サブタイトルに「Yの悲劇」とあるように、また以後の作品に国名シリーズが登場するように、有栖川氏は熱狂的なクイーンファンである。
有栖川有栖「月光ゲーム」Yの悲劇 '88
2001年1月12日 23版
有栖川有栖索引
関連事項(5月14日)
追記
8月1日:「酔眼漂流記」さんの「月光ゲーム」にトラックバックさせて頂きました。
8月18日:すみろぐさんの「『月光ゲームYの悲劇'88』 有栖川有栖」にトラックバックさせて頂きました。
10月31日:みmicatDIARYさんの「ミステリ遍歴」にトラックバックさせて頂きました。
2005年5月20日:りょーちさんの有栖川有栖「月光ゲーム」にトラックバックさせて頂きました。
2007年8月28日:b.k.ノムラ (黒猫亭番頭)さんの月光ゲーム/有栖川有栖に、トラックバックさせていただきました。
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