川端裕人「The S.O.U.P.」
非常に面白かった。同時に怖かった。
川端裕人 著 「The S.O.U.P.」
出版:角川書店
サイズ:文庫 / 456p
ISBN:4-04-374801-9
発行年月:2004.5
利用対象: 一般
以下、帯より
世界中を熱狂させたゲーム「The S.O.U.P.」の開発から十年。プログラマから一転、セキュリティを護るハッカーとしてFBIの依頼もこなす巧似、経済産業省から、悪質なHP侵入者を突き詰めた欲しいという依頼が入る。
インターネットというのは善意を前提にしている。だから悪意のあるものが攻撃しようとすると、非常に脆い。
あり得ない話ではないと思えるのが怖い。
世界中を巻き込んでのインターネット戦争が描かれる。
もう一つ。この本では、引きこもりのことにも触れている。
主人公巧(タクミ)もかつては引きこもりであり、今も外へ出るよりは部屋の中の 自ら「コックビット」と名付けた場所で過ごす方が充実している。
そして他の登場人物達も、多かれ少なかれ世間との接触に不器用な若者達だ。
自分自身、人と交際することが苦手だ。一時期は実際に引きこもっていたこともあり、現在も人前へ出ていくのを苦痛に感じることは多い。
約束していても、直前になってどうしても出て行けないこともある。
以下、本文より引用
……奥深く、今も心に隠し持っている原点。繋がれていないことの不安と、繋がれなければ生きてていけない不安が常に混合した奇妙な表現の形。
よく、一人では生きていけないのだからと積極的に交際する いわゆるネアカが評価されることが多いが、どういう生き方でもいいのではないかと時に思う。
例えば、母乳がいいからとあまり言われて母乳が出ない母親が陥る孤独感のようなものといったらいいだろうか。さらに、結婚することがあるいは結婚したら子をなすことが当たり前とされて、肩身狭く暮らすといった事とも通じるだろうか。
昨今は「負け犬の遠吠え」といった本が売れているそうだが、そのこと自体、当たり前と見なされないことへの好奇心の表れではないのか。
「夏のロケット」とは違う青春群像?を描いて秀逸。
書籍・雑誌の新着案内で浮世亭風流24号さんが「川の名前」を紹介していらっしゃったので、トラックバックさせて頂きました。
川端裕人 著 「The S.O.U.P.」
平成16年5月25日 初版発行
関連記事:川端裕人の本2
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コメント
こんばんは!
一番最初に読んだ川端本がコレなんですよ。
確かに怖かったけど、ネットの奥深きものが
たくさん書かれていて難しかったです。
ひきこもり・・・ある意味私もひきこもりかも。
私自身は普通に暮らしているつもりなんですけどね。
ただあまり外に出るのが億劫で。
人と無理して付き合うのも苦手で。
まだ幼きわが子はこんな母親が少々不満のようですが。
投稿: ちびぽりん♪ | 2004.07.26 18:52
ちびぽりん♪さん、
お早うございます。今日も暑くなりそうですね。
そのサイトが消されても、ログが残って しかも人格を持って彷徨っているって、非常に怖く感じました。
投稿: 涼 | 2004.07.27 07:48
涼さん、はじめまして。トラックバック有難うございます。
『The S.O.U.P.』を読んだ時の感想、というか、ネットで知り合ったまだ見ぬ友人たちが、本当に現実に存在しているのか不安になったりしました。
過去の記事も本家のサイトも全部読ませていただいておりましたので、お返事が遅くなってしまいました。
投稿: 風流 | 2004.07.28 01:34
風流さん、お早うございます。
∥ネットで知り合ったまだ見ぬ友人たちが、本当に現実に存在しているのか
テキストだけのおつきあいって不思議な感覚ですね。初めてのオフの時、随分ドキドキしたものです。
∥過去の記事も本家のサイトも全部読ませていただいておりましたので、お返事が遅くなってしまいました。
恐縮です。有り難うございました。
投稿: 涼 | 2004.07.28 06:57
涼さん、こんばんは♪
My Recommend Books!へのご参加ありがとうございます。
川端さんは実は未読なんですが最新刊の『ふにゅう』が私の大好きな重松清さんが情報誌に解説を書かれてると言う事で読んでみようかなと思っております。
それではこれからもよろしくお願いします。
投稿: トラキチ | 2004.08.07 20:54
トラキチさん、お早うございます。
登録有り難うございました。
重松清さんは、直木賞受賞の「ビタミンF]しか知らないのです。川端裕人さん、面白いですよ。「ふにゅう」は、これまでとは違った書き方だそうです。
投稿: 涼 | 2004.08.08 07:57