S・J・ローザン「ピアノ・ソナタ」
| ピアノ・ソナタ(創元推理文庫) | |
![]() | S・J・ローザン著・直良和美訳 出版社 東京創元社 発売日 1998.12 価格 ¥ 1,029(¥ 980) ISBN 4488153038 bk1で詳しく見る ![]() |
シェイマス賞最優秀長編賞受賞。
前作「チャイナ・タウン」は中国人の女探偵リディアが語っていたのに対して、今回の担当は相棒 ビル。
バーボンを飲み、タバコで頭をよみがえらせ、ピアノを弾く探偵。
このビルの描写については、広辻万紀氏の解説に全面的に同意できる。
タイトルの「ピアノ・ソナタ」は、ビルが弾くシューベルトの変ロ長調を指すのだろう。舞台の背景に常にピアノ・ソナタが流れているような錯覚に陥る。
そして、辛い任務の最中にも指の動きを浚う無骨な探偵の今回の事件は、ニューヨークの一面をよく浮かび上がらせている。
殺伐とした背景ではあっても、救いはいくつかある。頑固な元ピアノ教師アイダ・ゴールドスタインと言葉を失ったエディ・ショーンとの交流。
幼い子ども達の存在も、いい。作者の温かい目が感じられる。
圧巻は、刑事ハンク・リンフォースと悪の権化スネークとの最後の会話だ。
途中、何度も読み進めるのが辛くなる場面もあるが、次作が楽しみだ。ファッションを取り上げ、リディアが担当する事件だという。
日本の作家と比べて、いつも洒落た言葉の使い方に感心してしまう。
S・J・ローザン著・直良和美訳「ピアノ・ソナタ」
1998年12月25日初版
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