石井桃子【三月ひなのつき】
ページ数: 96
サイズ: 22X20cm
初版: 1963年12月01日
ISBN: 4-8340-0018-4
よし子はまだひな人形を持っていない。お母さんが規格品を買い与える気になれないからです。ひなまつりを通して母と子の心の交流をすがすがしく描いた童話。
よし子はおかあさんと二人暮らし。おとうさんは2年前の3月3日、楽しみにしていた鶯の声を聞くことなく亡くなった。
それからは、お母さんが洋服を縫って暮らしを立てている。
よし子はおひな様が欲しい。だがお母さんは、自分が幼い頃持っていたひな人形のイメージが強烈で、よし子にありきたりの段飾り雛を買ってはくれない。
そのお母さんのおひなさまは、全部が巾60センチ・高さ30センチ・おくゆき50センチほどの木の箱に入っている。漆を塗った箱の一方が一対の引き出しになっていてその引き戸にはふすま絵のように野山の絵が描いてある。
その戸を2枚とも外すと、中にはひな壇が入っているのだ。
ひな壇は、箱の上に載せて飾る。
雛の様子が詳細に描かれ、朝倉摂氏の絵がイメージをふくらませてくれる。
しかし、よし子は無くなってしまったお母さんの雛ではなく、今風のキンキラキンのものでもいいから、おひなさまが欲しいのだ。
意を決して思いを打ち明けたよし子とお母さんはデパートへ雛を見に行く。しかしお母さんに気に入る雛はなく、デパートの食堂で食事をして帰る。
ある日、よし子に勧められて同窓会に出かけたお母さんは、ウキウキした様子で帰ってきた。
ひな祭りが近づいても、おひなさまの話はデパートへ行った日以来、二人の間では出なかった。お母さんは相変わらず、夜なべをしている。
3月に入ってもお母さんはおひなさまのことを言わない。よし子はだんだん不安になってくる。
だが3月3日 お母さんはよし子に、学校から帰ったらお友達を呼んでおやつを食べるようにと言って出かけていく。
帰宅したよし子が見たものは……
それは、お母さんが夜なべで作った紙雛だった。
内裏びなの女びなは、十二単衣の袖をつばさのようにひざの上にたたみ、男びなは、いかめしく肩をはっています。五人ばやしは、いそがしく音楽を奏し、用があれば、すぐ立ちあがりそうなかっこうで、足をつまだててすわっていました。
そしてその側に、一対の小さな木彫りの内裏びながおられた。
その夜、おひなさまの前に布団を敷いて二人はやすむ。お母さんは、木彫りの雛を毎年一体ずつ揃えてくれるという。
今回、珍しく物語の筋を書いた。
この本をご存じの方はいらっしゃいませんか?
この本には、付録としておひなさまが折れる和紙も付いてきた。それぞれの人形に合わせた柄の和紙だ。
「てぶくろをかいに」があったはずだと思って二階へ行って見つけた本。娘が生まれた年に買っている。
よし子のお母さんが持っていた雛のようなのがないかと、ずっと探していたがまだ見つかっていない。娘には普通の五段飾りを与えた。今はチビさん達が楽しみにしているが、飾るより片づける方が大変である。
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コメント
はじめまして。kaoと申します。
「三月ひなのつき」子どもの頃に読みました。
表紙の絵、覚えています。ストーリーはほとんど忘れてしまいましたが・・・。
子ども心に、箱に収納できるというお母さんのおひなさまを「いいなぁ」と思った覚えがあります。
リカちゃんハウスが好きだったせいでしょうか(笑)ちなみに1962年生まれです。
でも、折り紙が付いていたという記憶がありません。図書館で借りた本だったのでしょうか?
なつかしくなり、コメントさせていただきました。
投稿: kao | 2004.12.17 12:14
kaoさん、ようこそ (^_^) コメントを有り難うございました。
この本をご存じの方がいらっしゃって嬉しいです。
後で調べたのですが、この本も折り紙キットも、今でも手にはいるようです。
勤めていた頃なので、少しずつ折っていました。まだ段飾りが飾れるほど家が広くなかったのです。
∥1962年生まれです。
この年生まれの方は、たくさん知っています (^_^)
投稿: 涼 | 2004.12.17 15:39
この本は学級文庫にありました。読んだのは昭和43年頃だったと思います。当時田舎ではまだ段飾りの雛人形は一般的ではなく、この本に出てくる木彫りの雛人形…特に機能的に収納できる点に、ひどく憧れました。
投稿: の・高橋 | 2016.02.09 04:23
の・高橋さん、ようこそ!
懐かしい記事にコメントを頂き、ありがとうございます。
この本は、繰り返し読んだものでした。
収納できるひな人形、涼もこんなのが欲しいと思ったものです。
投稿: 涼 | 2016.02.09 16:43