仁木悦子【夢魔の爪】
短編集。角川文庫版。
表紙は、今回は白猫で、耳・口先・手足やしっぽの先が黒い。
この著者の探偵役は、文字通り探偵の三影潤や仁木兄妹がいる。
仁木兄妹シリーズは、彼らがまだ独身時代から結婚して子持ちになってからと成長?していく。
本書では、まだ若い頃の二人を描いた「赤い痕」と双方の子供連れでの「虹の立つ村」が入っている。
先の「青じろい季節」でもそうだったが、ここでの「小さい矢」でも障害者への著者の当たり前のこととしての描写がさりげなく書かれている。
「小さい矢」は、事故で車椅子生活を余儀なくされるようになった若い主婦と近所の小学生の女の子が交互に語っていくという形を取っている。車椅子で終日過ごすやりきれなさなども描かれている。トリックとしては、ちょっと無理があるかもしれない。
「青じろい季節」で、砂村朝人が脳性麻痺の淡井貞子の息子に対して、始めは構えて付き合っていたのが次第に認識をあらた段々ごく自然に付き合えるようになっていく経緯なども思い出させる。
最後の「ねむい季節」は、なんと21世紀のお話し。
膨大な熱エネルギーを夏に吸収し、蓄えて冬に放出するので、一年中一定の温湿度が保たれている。
喫茶店ではメニューのボタンを押すと飲み物を載せた自動ワゴンがレールの上を滑ってくる。
「夢魔の爪」
昭和五十三年十二月十日初版発行
昭和五十四年六月十日再版発行
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