◆篠田真由美【桜闇】
桜闇 | 篠田真由美〔著〕 出版社 講談社(講談社文庫) 発行年月 2005.9 \940 (本体 : \895) ISBN 4-06-275187-9 bk1で詳しく見る |
影に閉ざされた館の露台で老いた男は毒を盛られた。容疑者は彼の妻。だが、物証はない。事件の真相を解明したと信じた桜井京介だったが…。「二重螺旋」四部作を含む十の謎による作品集。いずれも実在の建築物をモデルにあるいはヒントに書かれた短編集。一つ一つの作品に出てくる建物が非常に興味深い。特に二重螺旋構造の建物というのは、想像するだけで眩暈がしそうだが。
また、これらは他の長編を補う形になっている。それらの作品を知らなくても充分楽しめるものではあるが、登場人物の相関関係について判っている方が、より楽しく読める。
京介以外の登場人物が語っていくという手法も、彼らの性格が現れて面白かった。
しかし、最後の「桜闇」は少々拍子抜け。ここで京介の過去に少しだけ触れられるが、背景説明が中途半端でやや消化不良になる。
これらの中では深春が少し道化じみて描かれてしまった「塔の中の姫君」が好きだ。
過去を引きずって自責の念に駆られた女性を京介が楽にしてやる「捻れた塔の冒険」も、題材こそ違えあり得る話で妙に現実味があった。
しかし、それの後日談の「永久を巡る階段」は今一つの感がある。人物の入れ替わりも想定内では無かろうか。
桜井京介シリーズの、これはちょっと一服といった短編集。
桜闇
2005年9月15日第1刷発行
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