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2005.11.03

松本清張【ゼロの焦点】

zerono shouten
松本 清張〔著〕
出版社 新潮社(新潮文庫)
発行年月  2005.9
\620 (本体 : \590)
ISBN  4-10-110916-8
bk1で詳しく見る
新婚一週間で失踪した夫の行方を求めて、北陸の灰色の空の下を尋ね歩く妻が巻き込まれた連続殺人。戦後の混乱を映す悲劇を描く傑作。

以下、ネタバレあり。

このタイトルを見て思い出すのは、昭和46年のテレビドラマ「ゼロの焦点」の最後の場面。奈良岡朋子扮する室田佐知子が小舟で沖へ出て行ってしまったのを、室田と禎子が断崖の上で見ている。『私がここに立っているのが見えたとみえて、もっと近いところにいた家内は、舟の中から、私に手を振っていましたよ』
この室田と禎子を誰が演じていたのか、どうしても思い出せない。

In her tomb by the sounding sea!
とどろく海辺の妻の墓!
この印象が強く残っている。 この本も、昭和33年から35年まで雑誌に連載されたとあるが、34年12月に光文社から刊行されたともある。物語は、32年末から33年はじめにかけてのことであろう。

戦後10年以上経って、ようやく落ち着いてきたとはいうものの、まだ戦後すぐのどさくさの暗い部分を引きずって生きている人たちがいた。
事件の核心を握る人物は解っていて読んでいるのだが、詳細は忘れている。途中、禎子が夫の昔の職業を尋ねて立川へ行き、風紀係をしていたというところで、事件の一番鍵となることを思い出した。
「地方名士」という章の建て方の中で紹介された、もう一人の主人公室田佐知子の前身である。

いわば、これは、敗戦によって日本の女性が受けた被害が、十三年たった今日、少しもその傷跡が消えず、ふと、ある衝撃を受けて、ふたたび、その古い傷から、いまわしい血が新しく噴きだしたとは言えないだろうか。
と、作者は禎子に言わせている。

禎子の夫鵜原は、佐知子と出会ってもその前身についてばらそうとしたわけではない。しかし、地方名士の妻として、また自身の才気煥発さでもって築き上げた現在の位置が失われることを、佐知子は恐れた。そこに、悲劇が起こった。

戦争は、こういう形でも、多くの犠牲者を生んでいく。

禎子が調べていく中で、役所の戸籍を見せて貰うところがあったが、現在ならば考えられないことであろう。
また、夜行列車を多く利用している。列車での移動は、非常に時間がかかっている。

禎子自身、母親と二人暮らしであったとしても、かなり裕福に感じられる。それは、汽車も二等車を使ったり、タクシーも多用していることから来た感想だが。


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ゼロの焦点
昭和46年2月10日発行
昭和62年7月5日51刷改版
平成17年9月15日105刷




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コメント

涼さん、nofumoです。NHKのテレビドラマ「ゼロの焦点」、当時我が家でも母が熱心に見ておりました。子供だった私は、奈良岡朋子扮する女性が無表情で小舟で沖へ出て行ってしまう最後のシーンだけは今でも覚えています。あれが死を意味するということが、子供心に、暗くて不気味で恐い話という印象をもたらしました。貴記事を拝見して、そんな感情が30年以上も経って再び甦ってきました (笑)。
残念ながら、他の俳優陣は全く覚えていません。ただただ、最後のシーンが印象的でした。
本とは関係のない話ですみません。

投稿: nofumo | 2005.11.03 23:21

nofumoさん、コメントをありがとうございました。

そう、やはりあのシーンは強烈だったのですね。
映画にもなり、色んな方が演じていらっしゃると思うのですが、私は奈良岡朋子の着物での立ち姿(それは もしかしたら他の番組あるいは舞台だったかもしれませんが)の佐知子に勝るものはないように思うのです。
佐知子の哀しさと畏れとを思い合わすとき、やはり適役だったと思います。とは言っても具体的にはあまり覚えてはいないのですよ。

投稿: | 2005.11.03 23:53

私も、高校生でしたが、奈良岡さんの佐知子は目に焼き付いています。
室田は滝沢修、禎子は十朱幸代だったと思います。

投稿: チエ | 2007.09.29 20:59

チエさん、ようこそ!

コメントをありがとうございました。
またお越し下さいね。

投稿: | 2007.09.30 15:28

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