松本清張【球形の荒野 下】
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松本清張〔著〕 出版 文藝春秋(文春文庫) 発売日 1996.4 定価 \693 (本体 : \660) ISBN 4-00-430442-3 bk1で詳しく見る |
最後の「七つの子」には、泣ける。
合唱は波の音を消した。声が海の上を渡り、海の中に沈んだ。わけのわからない感動が、久美子の胸に急に溢れてきた。
気づいてみると、これは自分が幼稚園のころに習い、母と一しょに声を合わせて、亡父に聞かせた歌だった。
しかし、この時代背景を差し引いても、母親孝子の事をもう少し描いて欲しかった。あまりにも淡泊で淡々としている。孝子の目線で書かれた場面が一つもなかったような気がする。
場面が京都へ移ってからは、何となく偶然が多すぎる。
著者は、何故添田と野上顕一郎とを直接会わせなかったのだろう?
久美子は結局、何も知らないまま添田と結婚するのだろうか?
とはいえ、先の旅行中にこの後編を読んだのだが、この本に出てくる情景描写のなんと美しく懐かしいことか。かなり知っている奈良の景観も、よく訪れた信州の風景も、京都のたたずまいも、すべて日本の原風景とも言えるであろう。
本書のすぐあとに、「砂の器」が書かれていたのだった。
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球形の荒野 下
2003年7月10日新装第1刷
2005年7月15日第3刷
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