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2006.03.25

◆宮部みゆき【誰か】

dareka 宮部みゆき〔著〕
出版 光文社(新書) 発売日 2005.08
定価 \900 (本体 : \857)
ISBN  4-334-07617-3
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財閥会長の運転手・梶田が事故死した。遺された娘の相談役に指名され、ひょんなことから彼の過去を探ることになった会長の婿・三郎は、姉妹の相反する思いに動かされるように、梶田の人生をたどり直すが…。

何となくザラッとした後味が残った。90パーセント以上良い感触だったので、大詰めでちょっと裏切られた感がある。

宮部みゆきは、人物の描き方が非常にうまい。特に年長者の心情など何故ここまで解るのだろうと思うことが多い。
しかし、今回は私(杉村三郎)というフィルターを通しての描き方であるがゆえの不完全さといっていいのか?
随所に、伏線が張られている。それはかなり容易に見当が付くものだが、浜田の描写は唐突だ。
ここまでは浜田に関することでの不快感。

もう一つは、聡美と梨子姉妹の何とも奇妙な、しかしここまで極端ではないまでも、あり得る関係。
おなじ「きょうだいの葛藤」でも、兄弟の葛藤を描いた「パーフェクトブルー」は秀作だと思う。
だが、この姉妹の両親を挟んでの互いの思いというのは、非常によく解る。

親は、子供たちを同じように愛している(と言う)。しかし、子供の側からすると、必ずしもそうではないのだ。

あなたと梨子さんはご両親の愛を争って育った。あなたは梨子さんが”いちばん星”であることを羨み、梨子さんはあなたが両親の戦友であることを妬んだ。
二人だけの姉妹だからこそ、梨子さんはいつでもあなたを標的にしてきたのだと言いたかった。

自分自身、二人姉妹の姉だから、聡美の思いが痛いほどわかる。
また、姉がいるとはいえ(部分的にはあったであろう)息子達二人の葛藤にも思いが及ぶ。


最後の場面

妻の瞳は明るかった。歌声は優しかった。ありとあらゆるものを洗い流してくれた。私は桃子を膝に乗せて聞き入った。

これらのフレーズがそこまでの嫌な気分を払拭してくれるには、少し時間が必要だった。


誰か
2005年8月25日初版1刷発行

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