稲泉連【ぼくもいくさに往くのだけれど】
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稲泉連〔著〕 出版 中央公論新社) 発売日 2004.7 定価 \2,310 (本体 : \2,200) ISBN 4-12-003554-9 bk1で詳しく見る |
フィリピンで戦死した詩人・竹内浩三。お姉さんっ子で、音楽を愛し、映画監督に憧れつつ太平洋戦争に従軍、23歳で戦死した若者が残した詩は、時代を越えて人の胸を打つ-。戦場で死ぬことの意味を見つめるノンフィクション。著者は、現在25歳。
本書を読むきっかけになったのは、落花の雪に踏み迷うにも書いた、新聞での桜のコラム。
浩三の享年23歳なら、著者の稲泉がこれを書いたのも23歳。若すぎる無念の死は、同じ年の若者の筆がその生きてきた日々を甦らせた。
本書に収録されている写真の飄々とした表情からは窺うことの出来ない葛藤をかかえて、浩三は戦地へ赴いて行った。
稲泉は、丁寧に当時の関係者に取材し、話に肉付けしていく。同じ年頃の若者達に、戦争はどう映っているのだろうか。
これを読んでもっとも辛かったのは、姉こうが浩三の戦死公報が届いた時に、一人家の裏で泣くシーン。甘やかし過ぎではと思われるほど、浩三を慈しんできた、こうである。
こうは、松坂市が戦没兵の手紙集を募集したとき、私家版の遺稿集を持っていく。責任者であった本居宣長館の前館長高岡庸治(つねはる)氏は、その手紙集の巻頭に浩三の詩を掲載する。
稲泉は2005年、最年少の大宅壮一ノンフィクション賞を受賞している。
ぼくもいくさに往くのだけれど竹内浩三の詩と死
2004年7月25日初版発行
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