原リョウ【天使たちの探偵】
天使たちの探偵 | |
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原 りょう〔著〕 出版 早川書房(ハヤカワ文庫) 発売日 1997.3 定価 \609 (本体 : \580) ISBN 4-15-030576-5 bk1で詳しく見る |
ある女の人を守ってほしい――沢﨑の事務所を訪れた十才の少年は、依頼の言葉と一万円札五枚を残して、雨の街に消えた。「少年の見た男」ほか、未成年者のからむ六つの事件を描く。(帯より)
何とも寡作な作家だ、この原りょうは。美学美術史科を卒業しジャズピアニストから作家へ転向という履歴を持つ。
ハードボイルドは好きではないのだが、このシリーズは別だ。ちょっと新宿鮫を想像させないでもないが、それよりもずっとナイーブで心優しい。
また、日本の作家には珍しく、随所に洒落たエスプリがある。
短編は、作家の技量が出るというのが自分の持論だが、タイトルが「……の男」で終わっているこの短編集は全て軽快で飽きない。
先日読んだ長編がやや冗長気味であっただけに、この軽快さは心地よい。
この作品は、6編の短編からなっている。時代は1980年代後半。
『少年の見た男』『子供を失った男』『二四〇号室の男』『イニシアル”M”の男』『歩道橋の男』『選ばれる男』そして、付録?の一編。
ハードボイルドではあっても、そこにはほんの少し仁木悦子に通じるようなやさしさがあり、惹きつけられる。
フェアな伏線とほどよい起承転結で、全編話の展開にほぼ無理なくつきあえる。
40代になって「そして夜は甦る」でデビュー。「私の殺した少女」で直木賞受賞。そしてこの短編集へ。
「私の殺した少女」を読んでファンになったのだが、沢﨑シリーズを知るには、本書から入るのもいいかもしれない。
天使たちの探偵
1997年3月15日発行
2004年12月31日9刷
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コメント
探偵沢崎ものですね、ボクも三巻持ってますよ!
新宿鮫よりも熱さを抑えたテイストで、
ちょっと湿った空気感があり、映画を観る様な作品ですよね
投稿: 章仁 | 2006.05.30 13:58
あ、沢﨑ファンがいらっしゃって、嬉しいです。
派手な作家じゃないから、知っている方が少ないようなのです。
∥ちょっと湿った空気感があり、映画を観る様な作品ですよね
まさにそうですね。
そして、子供を見る視点が優しくて好き!
投稿: 涼 | 2006.05.30 18:14