原リョウ【さらば長き眠り】
さらば長き眠り | |
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原リョウ〔著〕 出版 早川書房(ハヤカワ文庫) 発売日 2000.12 定価 \840 (本体 : \800) ISBN 4-15-030654-0 bk1で詳しく見る |
私立探偵沢崎シリーズ長編第三弾。5年の歳月をかけ、ついに完成。「そして夜は甦る」「私が殺した少女」の前二作で一世を風靡したハードボイルドの旗手が、長い沈黙を破り、世に問う渾身の一作。
今回も、PL学園や阪神タイガースが登場したり、現実の事件によって世間の動きを知らせる手法は相変わらずだ。
また、アウトサイダーや不機嫌な警部とのやりとりもお馴染みだ。
さて、今回の依頼人魚住彰は、一旦は依頼を断る。しかし、沢﨑は魚住のことが気になって仕方がない。何かあれば相談せよといって沢﨑を紹介した元少年相談員の草薙は『あの青年にはどういうわけか人をそういう気にさせるところがあるようだな』と言う。甲子園にも出場したことのある魚住は、体格も立派だ。その後巻き込まれた事件で陥った窮地も、一人で切り抜けた。家庭環境の難しい陰も引きずっていない。草薙は言う。
いつ会っても礼儀正しくて、落ち着きのある好青年なのだ。それがどういうわけか、こっちが世話を焼かずにはいられないような気持ちにさせられる。
しかし、次々と暴かれていく事実は、魚住にとって更に過酷なものだった。
魚住の襲われ方などに多少違和感があるが、一件無駄と思えるサイドストーリーも、巧妙な伏線と取れないこともない。
ここまでの三作でずっと名前だけの登場だった渡辺についてもけりがつき、本書で一旦沢﨑ものは終結をむかえるようだ。
しかし、「愚か者死すべし」という2004年刊行の新シリーズが始まったようであり、これの文庫化が楽しみだ。
「あとがきにかえて――世紀末犯罪事情」と題して文庫化の際に書き下ろされた「死の淵より」が、気の利いた掌編になっている。
さらば長き眠り
2000年12月15日発行
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