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2006.09.25

畠中恵【ぬしさまへ】

ぬしさまへ
ぬしさまへ 畠中恵〔著〕
出版  新潮社(新潮文庫)
発売日 2005.12
定価 \500 (本体 : \476)
ISBN   4-10-146122-8
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身体が弱くて繊細で力もないけど、どんな事件もたちまち解決! それは強い味方がついているから!? 健気な若だんなと妖怪たちが繰り広げる洒落っ気たっぷりの痛快人情推理帖。 (親本内容説明より)

まさに、座して推理する名探偵、一太郎。

最初に読んだのが、「しゃばけ」でよかった。ここでは一太郎の正体?が、最初に明らかにされてしまう。
短編の煩わしさは、短い物語の中で、いずれの作品にでも約束事が一々語られることだ。

だが、一つ一つの物語は面白かった。

二面性を持つかに見える被害者とその周辺から浮かぶ、江戸庶民の暮らし方。表題作「ぬしさまへ」


証拠?の見つかり方にやや難のある「佐吉の菓子」。傘の中へ証拠の品を放り込んだのは、コロンボだったか?

「空のビードロ」は、切ない。

「生きていればいつか何か、心が浮き立つようなことに出会えるに違いない」
実は一太郎の兄松之介は、希望のない暮らしながら、拾ったビードロの根付けを見ることで希望を持つ。
丁度「しゃばけ」の後半ともリンクして、一太郎達は与吉と対決したのだったが。
子どもの頃、ビー玉やガラスのおはじきは、宝石のように綺麗に感じたことを思い出した。

最後の「虹を見し事」では、一太郎はちょっぴり大人になったようだ。しかし、

心底いつもの妖たちが恋しかった己が厭わしい。
という一太郎でもあった。


それぞれのタイトルページに、妖(あやかし)たちの姿が描かれていて、彼らの活躍を想像するのを助けてくれる。


しかし、江戸で暮らしていくのは大変だったろう。奉公先によっては、のれん分けをして貰えたり通い番頭になることも出来るが、多くは独立することも叶わぬまま、希望を持てない暮らしを続けていたのかもしれない。
ふと、現代に立ち返る。豊かになり、モノがあふれていても、何となく不安感がつきまとうのは何故だろう?


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ぬしさまへ
平成17年12月1日発行
平成18年7月25日7刷


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