ボール犬ミッキー |
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室積光〔文〕福岡耕造〔写真〕 出版 幻冬舎 発売日 2006.4 定価 \1,470 (本体 : \1,400) ISBN 4-344-01157-0
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届けたボールが繋ぐ、未来への夢。2005年4月に広島市民球場でデビューしたベースボール犬ミッキー。一躍人気者になったミッキーと、その活躍をテレビで眺める広島東洋カープ2軍投手との心の交流を描くフォトストーリー。
ある日長男と、ボール犬ミッキー可愛いねという話になり、何か本がないかなと探して購入したのが本書。
ミッキーについて書かれているのかと思ったが、そうではなかった。
口絵には、ふんだんに写真がある。ミッキーがアンパイアの前でステイしてボールが取られるのを待っている写真など、キリッとした彼の写真が実に可愛い。
本文に入っての冒頭は、『ぼくはミッキー』で始まっている。ミッキーが語っていくという出だしだ。ボール運びについて紹介すると同時に、ミッキーがトレーナーの女性と一緒にダッグアウトから出てきてボールの入ったカゴを受け取り、それをアンパイアに渡す写真が掲載されている。
ところが次のページは、『こんにちは、ミッキー』で始まっていた。
本書は、二軍のピッチャー坂本篤史(僕)とミッキー(ぼく)が交替で、とあるシーズンを語っているのだった。
三部仕立てで、それぞれ「シーズン前半戦」「シーズン中盤戦」「シーズン後半戦」と題されている。
僕は、一軍昇格を目指しているが、肘の故障でなかなか思った結果が出せない。ミッキーは、そんな僕の思いを受け止めつつ、時に的確な感想を述べる。
本文中には、様々なシーンのミッキーだけではなく、野球を支えている色々なものが、切り取られている。写真だけで、一つの物語を形作っているようだ。
そして僕は、父親に言われた『仕事というのは他人を幸せにするためにするんだ』という言葉を、ミッキーに贈る。
ミッキー、君はとてもいい仕事をしている。アンパイアにボールの入った籠を渡す君を見て、元気になったり、幸せな気分になる人はたくさんいるはずだ。
その横には、アンパイアに頭をなでて貰ってから、拍手の中を誇らしげに退場するミッキーの写真。
ミッキーの言葉から
ぼくらは人間よりも短命だから、「家族」の死に直面することは滅多にない。
たいていの場合、家族の誰よりも早く死んでいって、悲しみだけを残していく。
だから、おにいさんやアキオ君の悲しみは本当にはわからないかもしれない。
でも一つ感じるのは、家族の死が二人を強くしていること、優しくしていることだよ。
それを思うと、ぼくら犬の死も、人間に悲しみだけを残しているわけじゃないんだな。
「僕」も「アキオ」も、両親を亡くしている。
最愛の家族の死という試練を経験している。
最終ページは、球場でスタンバイしている背番号111のユニフォームをつけたミッキーのうしろ姿の写真だ。それは、カープを去っていった若者達へのエールでもある。
さようなら。そしてまたね。
みんなが愛した野球といっしょに、ぼくはいつもここにいるよ。
今年も、日本シリーズを残すのみとなった。ミッキー、来シーズンもしっかりお仕事をしておくれ!
著者略歴欄には、室積氏や福岡氏よりも先に、ミッキーが紹介してあった。
1997年4月10日生まれ。ゴールデン・レトリバー、オス。体長100cm、体重38kg。98年、中国訓練チャンピオン決定競技会優勝。2005年4月10日、日本球界初のベースボールドッグとして公式戦デビュー。背番号は111(ワンワンワン)。特技はボール遊びで、ぬいぐるみが大好き。
室積光氏は、野茂ベースボールクラブの運営にも協力するなど、著述業意外でも幅広く活躍している方だという。
ボール犬ミッキー 2006年4月20日第1刷発行
2006年5月15日第2刷発行
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