【偽りの大化改新】
偽りの大化改新 | |
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中村 修也〔著〕 出版 講談社(講談社現代新書) 発売日 2006.9 定価 \756 (本体 : \720) ISBN 4-06-149843-6 bk1で詳しく見る |
中大兄王子は、大化の改新で蘇我入鹿を殺していなかった! 古代史最大の常識は、ある意図をもって書かれた「日本書紀」による偽りの歴史だった。緻密な検証と推論で、歪められた真実に迫る。
あまりにも知られた中大兄皇子と中臣鎌足の出会い。そして二人は肝胆相照らして密議をし、大化の改新に至るクーデターを起こす。
本書は、その歴史の常識?に挑んだ本である。
中大兄皇子といえば、大化の改新を成し遂げたヒーローと思われてはいないだろうか。
しかし本書は逆に、日本書紀に描かれた中大兄の残虐ぶりをあぶり出すことにより、彼と鎌足とは蘇我入鹿殺害に荷担していないと論じている。
「記紀」と、古事記と並んで呼ばれ、最古の歴史書とされている「日本書紀」。
それは、壬申の乱後の天武天皇時代に編纂されたものであり、中大兄すなわち天智朝から簒奪した形で朝廷をたてた天武朝の正当性を知らせるために編まれたのだという。
「日本書紀」には、中大兄のイメージダウンをさせる六つの記事がある。それらは、
1. 蘇我入鹿を殺害
2. 古人大兄を殺害
3. 蘇我倉山田石川麻呂を自刃に追いやる
4. 孝徳置き去り事件
5. 有間皇子尋問→絞殺させる
6. 病床にあって大海人を陰謀にかける
このうち、孝徳(軽皇子)置き去りは、自らの皇后にも背かれたかわいそうな大王という印象がインプットされていた。しかし本書によると、軽皇子は皇極から王位を簒奪している。
この時代、聖徳太子の息子山背大兄王や軽皇子、後には中大兄や有間皇子など、皇位継承を巡っての攻防は複雑な婚姻関係とも相まって真相はどうなのだろうか。
歴史書というのは、中国では天子が替わった時に編まれることが多く、それはどうしても自らが天の御子であることの正当性を描いたものになる。
「日本書紀」もそれらの影響を受け、天智天皇・大友皇子から王位を奪った天武天皇が意識的に描かせた人物像ではと結論づけている。
丁度万葉集に詠われた時代でもあり、本書の登場人物の歌(特に有間皇子の歌など)から想像している人物像や背景とのギャップも興味深かった。
日本人は、どうしても敗れた側をひいき目に見る。
偽りの大化改新
2006年6月20日第1刷発行
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