藤原伊織【雪が降る】
雪が降る | |
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藤原 伊織〔著〕 出版 講談社(講談社文庫) 発売日 1999.8 定価 \630 (本体 : \600) ISBN 4-06-264615-3 bk1で詳しく見る |
「あの人は夢ばっかり見てる人だった。私も夢を見ていたのかもしれない。でも…」 男と女のそれぞれの視点から綴った心あたたまる短篇集。
「台風」「雪が降る」「銀の塩」「トマト」「紅の樹」「ダリアの夏」の六編。先の「雪降り山荘の殺人」と比して、きびきびした場面展開と簡潔なセリフで楽しめる。
どの作品も、現在と過去を行きつ戻りつしながら、話が展開していく。
現在の過酷な職場環境の中で出たビリヤードという言葉から、少年時代の回想になる「台風」。気持ちは既に決まっていて、オチはその少年時代に微かな恋心を芽生えさせていた相手が妻であることか。
アダモの「雪が降る」がBGMとして聞こえてくるような表題作「雪が降る」は、同期でライバル高橋の息子の描写がよい。つかの間、メルヘンチックな気分になれる作品。
高橋は、何も知らなかったのだろうか?
「紅の樹」は切なかった。はっきりと描かれてはいない淡い恋情と、登場場面こそ少ないが存在感のある若頭の描写がうまい。途中で結末が予測できるのが惜しかった。
「ダリアの夏」は、文字通りその風景が浮かんでくる小品。うまくはないが野球が好きな少年の成長を予感させる。ここにも、不思議な女性が登場する。
いずれも主人公は男だが、女の影が大きい。
こうしてみると、どれかを膨らませた長編が読みたくなる。「てのひらの闇」は「紅の樹」を元にしていると解説氏が説いていたが、どうなのだろう。
雪が降る
2001年6月15日第1刷発行
2006年6月15日第12刷発行
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コメント
偶然、「藤原伊織」の検索中に、このページ発見、お懐かしゅうございます 私はとある図書館の講習生、2年前にお世話になりました。おかげさまで昨年、デェージー図書を、自力で完成することが出来ました。
投稿: おちゃとも | 2008.02.07 20:31
おちゃともさん、コメントをありがとうございます。
そうですか、お目にかかっているのですね。どなたかなぁ。
∥おかげさまで昨年、デェージー図書を、自力で完成することが出来ました。
それはよかったです (^_^)
作っていく中で、技術も上がっていきます。また疑問点などありましたら、どうぞご遠慮なくお尋ね下さいね。
投稿: 涼 | 2008.02.07 21:29