仁木悦子【聖い夜の中で】
聖い夜の中で | |
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仁木 悦子〔著〕 出版 光文社(光文社文庫) 発売日 2006.12 定価 \600 (本体 : \571) ISBN 4-334-74164-9 bk1で詳しく見る |
昨日上本町駅で買った本。
新装版とあるが、タイミング良くクリスマス前の発売だったようだ。
無心な天使(幼子)が脱獄囚の気持ちをゆさぶる表題作始め色合いの違う5編を収めてある。
冒頭に御夫君後藤安彦氏の「本書を刊行するにあたって」という一文がある。
推理小説というのはもともとフィクション性のきわめて高いlジャンルですが、それでも生前身近にいたわたしなどの目から見ると、たとえば「陰のアングル」の冬子や「折から凍る二月の」の「わたし」に、年齢の違いを超えて著者仁木悦子の面影が二重写しになっているように感じられます。後藤氏はだが、こうした個人的な自分の感情などは忘れて物語を充分楽しんで欲しいと書いておられる。
氏の悦子さんへの思いが溢れている。
また巻末には、丁寧な年譜と作品一覧も掲載されている。どれも懐かしい作品ばかりだ。再読したい。
さてその最初の「陰のアングル」は、結婚しようと思っていた相手が突然殺されるという悲劇を書いている。ただ、後半殺された若者の像が少し崩れていくのが悲しい。
「うさぎを飼う男」は、著者お得意の子ども探偵登場。これは、どこかで同じような展開を見たような気がするのが残念。
次の「折から凍る二月(きさらぎ)の」はよかった。息子夫婦に女の子の孫二人と暮らす「わたし」が探偵役。後藤氏が書かれているように、まさに仁木悦子的好奇心が面白い。事件は戦争の影を引きずってせつない。
ここでは事件そのものよりも、「わたし」の暮らしぶり、生きてきた過程などに関心が向く。年代的にはやや上の方だが、戦後の混乱を一生懸命生きて、少しずつ貯金を貯めて欲しい本を買っていたという暮らしぶりなど共感できる。
子どもの頃憧れた欲しい本を存分に買いたいというささやかな願いは、今形を変えて自分自身の中にもある。月2万円近く本代に使っていいものかどうかは少々疑問ではあるが。
さて御影探偵が登場するのが、「数列と人魚」だ。ここでの被害者はあまりにも悲しいが。
「聖い夜の中で」のひろむ坊やに、幸せが訪れますように!
聖い夜の中で
2006年12月20日初版1刷発行
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