藤沢周平【秘剣秋風抄】
隠し剣秋風抄 | |
![]() |
藤沢 周平〔著〕 出版 文藝春秋(文春文庫) 発売日 2007.1 定価 \620 (本体 : \590) ISBN 4-16-719239-X bk1で詳しく見る |
「隠し剣」シリーズ第二弾。
それぞれに秘剣を持つ侍を主人公に、九つの短編から成っている。当初一日1・2編くらいずつ読むつもりだったのが、最初のうちこそ守っていたがその後は一気に読んでしまった。
おそらくいつもの海坂藩のことであろう。様々な藩士たちの日常生活も伺える。
その中で、それぞれ剣の達人と呼ばれた九人を主人公に、家族愛・夫婦愛などを織り交ぜながら語られていく。現代のサラリーマンとも似たところもある。また、女の情念の怖さも。
「汚名剣双燕」
「見たぞ、双燕」 光弥も剣士だった。そうつぶやいて眼を閉じた顔に、微笑を残した。康之助は、黙ってその顔を見おろした。光弥の微笑が、汚名を洗い流してくれたのを感じていた。
「女難剣雷切り」
どうにも女運の悪い佐治惣六。やっと上司から話があって迎えた四番目の妻は、その上司の妾だった。
かつて藩に入り込んだ盗賊を成敗した実績を持つ腕は、姦夫姦婦の髷を落とす。
女中のおさと一人、惣六の不運に同情してくれる。
「好色剣流水」
これも果たし合いを受けて立つ羽目になった三谷助十郎。鍛錬をおこたっていたので分が悪い。最後に秘剣流水を使って相打ちとする。だが、自分は命を落とす。
「陽狂剣かげろう」
昔の遺恨によって、幸せな許嫁たちを陥れたものがいる。かげろうのように淡く散った二人の恋。真相を探るために装った狂気はいつか本物となって佐橋半之亟を滅ぼしていく。
「偏屈剣蟇ノ舌」
馬飼庄蔵は、その偏屈さのゆえに、派閥争いにに利用されてしまう。最後に罠にかけられたことを知り、初めて妻に心情を告げる。
「孤立剣残月」
15年前に上意討ちで手柄を立てた子鹿七兵衛。
女クセが悪いという噂を立てられ妻からも疎んじられている。それが、15年前に切られたものの弟が敵として果たし合いを挑んでくると聞き、焦る。妻はあきれて実家へ帰ってしまうが、果たし合いのその日、危急を救ったのは、その妻だった。
なかなか微笑ましいが、妻の心情については今一つわからず、想像するしかない。
最後の「盲目剣谺返し」が、山田洋次監督の映画「武士の一分」の原作である。
関連記事
武士の一分(07.01.05)
隠し剣秋風抄
2004年6月10日新装版第1刷
2006年6月10日第8刷
| 固定リンク
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 【くらべて、けみして 校閲部の九重さん】(2025.03.13)
- 【Casa BRUTUS特別編集 器の教科書】(2025.03.11)
- pha【移動時間が好きだ】(2025.03.10)
- 林望【節約を楽しむ あえて今、現金主義の理由】(2025.03.08)
コメント