月命日:たわいない会話
食卓をはさんだ壁に、向かい合わせに世界地図と日本地図をはっている。
自分の食卓イスからは、やや斜め向かいに世界地図が見える。とは言っても、視力の悪い自分にとって、ロシア連邦のうす緑色は海の色に埋没してしまっている。勿論字は見えない。
『チリって細長いね』
『なんだ、突然』
『うん、日本も南は台湾近くまであるけど、もっと長いんだ』
『ああ』
『地球は広いのかな。宇宙の中のちっぽけな星なのに』
『その小さな星の中で、言い合ったり、色んなことが起きたりしている』
『今日少し読んだ伊坂幸太郎さんの本に、あと三年で隕石が当たることが判っているという話があってね……』
たわいない会話である。
昔はよく、よっぴいて話していたものだ。町子夫婦のようにお酒が入らなくても、次から次へと尽きることはなかった。
二人とも、しばらく黙る。
今は胸の内にはいつもあっても、言葉になって出てこない話もある。
この小さな星から飛び立った命は、広い宇宙のどこかで、新しい星になっているのだろうか。
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