斎藤明美【高峰秀子の捨てられない荷物】
高峰秀子の捨てられない荷物 | |
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斎藤 明美〔著〕 出版 文藝春秋(文春文庫) 発売日 2003.3 定価 \710 (本体 : \676) ISBN 4-16-765658-2 |
虚飾の世界を自ら離れた高峰秀子。だが、義母との凄絶な関係は終わらなかった。身内との葛藤、そして、世俗のしがらみを捨て去って到達した自由な境地。女優高峰秀子の清冽な生き方を描く。
ことの始まりは、10年以上前になる。
ボランティアセンターの片隅で、一枚の新聞を見つけた。社会福祉関係の新聞だったと思うが、そこに高峰秀子氏の徹底した過去への決別のようなものを見いだしたのだった。
あまりのすさまじさに松山善三氏が「自分までも処分されるのではないか」(要旨)と仰有ったとも書いてあった。
この姿勢に憧れ、以来挑戦しながらも挫折の日々を過ごしているわけであるが。
そしてこの本を読もうと思ったのも、この10年以上前に遭遇して痛く影響を受けたこの「整理術」関連の本かと思ったからだ。大女優の「整理術」とは、いかなるものだろうかという興味といっては失礼だろうか。
ところが、本書はそれを見事に裏切ってくれた。
とある雑誌で松山・高峰夫妻を「とうちゃん、かあちゃん」と呼ぶライターがいることを知った。そして、偶然見つけた本書の著者が、その人だったのだ。
高峰秀子は、母の世代の人である。名子役だったと聞かされてはいても、銀幕で出会った頃はもう大女優だった。
本書で泣けたのが、結婚する辺りの記述だ。
当時、高峰の家庭の事情など知る由もなかったが、良い方と結婚なさったと思った記憶がある。
今、その結婚式の写真を見ていると、松山氏は本当にさわやかな青年だ。
そして、そのまま年を重ねて来られたような気がする。
高峰が慕っている川口松太郎が『あの男はまるでおまえの亭主になるために生まれてきたみたいな奴じゃねえか』と言ったというが、本当に良い出会いをなさったものだ。大げさでなく、救い主ではなかったか。
本を読むことの幸せは、こうした生き方・考え方を知ることが出来ることではなかろうか。(追記予定)
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