奥田英朗【マドンナ】
マドンナ | |
奥田 英朗〔著〕 出版 講談社(講談社文庫) 発売日 2005.12 定価 \525 (本体 : \500) ISBN 4-06-275263-8 |
部下に恋をする。息子がダンサーになりたいと言い出す。同い年の女性が上司になる-今、日本で一番大変なのは「課長さん」。注目の大藪春彦賞作家が、愛をこめて「課長さん」を描く短編集。
同じ職場ものでも、横山秀夫の作品とは、180°異なっている。
部下に恋をした表題作は、張り合った部下ともども空振りに終わってしまう。急におしゃれになったり、気を使ったり、なかなか滑稽でもある。しかし『マドンナ』は、やはり手の届かぬ存在だったのだ。
父親は一所懸命働いているのに……息子がダンサーを目指していることにとまどう『ダンサー』。しかし、彼も又若い頃の夢を思い出さないわけではない。
『総務は女房』というタイトルは、如何なものか。適当にアメをしゃぶらせておいて、不満を逸らそうということとも取れる。
時流に乗らないちょっと外れものを描くのに、日本ハムファイターズファンだったり、女房のボランティアにつきあう男だったり、エコロジー問題に取り組む髪の長い中年男だったりと、少々類型的だと言えなくもない。
面白かったのが、上記紹介にもある「同い年の女性が上司」でやってきた課長さんを描いた『ボス』。次は自分だと思っていたので、まずくさる。
しかもこの新しい部長。切れ者なのにソフトで嫌みがなく、総合職の女性の憧れの的になる。これまでの悪習をことごとくやんわりと、しかし厳しく否定されて焦る。
あろうことか、配偶者同伴のオペラ見学までさせられた挙げ句、女房たちも部長ファンになる。
しかし彼は、その女房がシンガーソングライターのライブビデオにうっとりとしている様子を垣間見てしまう。また、部長の意外な趣味をも知り、ひとり納得するのだ。
これら7編とも、会社と家庭、女性部長と女房といった二極をうまく配してある。これも少々類型的と言えなくもないが。
気楽に楽しめる一冊である。
マドンナ
2005年12月15日第1刷発行
2007年1月30日第3刷発行
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