横山秀夫【深追い】
深追い | |
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横山 秀夫〔著〕 出版 新潮社(新潮文庫) 発売日 2007.5 定価 \580 (本体 : \552) ISBN 4-10-131671-6 |
「コンヤハ カレー デス」事故死した夫のポケベルに、メッセージを送り続ける妻。何のために? 誰のために…。真の被害者は…罪深き行為とは…。事故と事件の狭間に揺れる様々な思惑を描いた警察小説。
首都圏に近い地方都市三ツ鐘市にある警察署が舞台の短編集。いつものように連作ではなく、それぞれが独立している。
職住近接といえば聞こえがよいが、私生活でも拘束されている身では、さぞかし窮屈なことも多かろう。
初恋の女性が事故に係わっていたことに驚く若い警察官を描く表題作。
小学生の頃、前途ある若者の死と引き換えに救われ、それの重みでずっと辛い気持ちを引きずってきた若い警察官の話、「又聞き」。真相を知ったことによってより重みを感じながらも、そこから一歩抜け出ようとする。
上司に逆らって三ツ鐘署に飛ばされ、昇進も望めなくなった中年の警察官が、同じく上司と喧嘩して出世できずに退官する先輩の就職先を探す「訳あり」がいい。警察官以上に警察官らしい警備会社社員の描写も楽しい。
「引き継ぎ」「締め出し」「仕返し」は、ちょっと辛い話だった。
いずれも、ちょっとした言葉や動作の断片から真相に近づいていく手法は確かだ。
中でも共感を覚えたのは、最後の「人ごと」だ。
主人公は事務職員であって、警察官ではない。花が好きでどこへ赴任しても、署の庭に花壇を作っている。
可愛がっていた姪が、グレて事故死した。その親である姉から甘やかしたからだと罵倒され、以来 人との関わりをできる限り避けて生きてきた。
その西脇が、ひょんなことから知り合った孤独な老人の安否確認をしているうちに、その老人 多々良の気持ちに寄り添うようになる。
「セントポーリアは……人間とよく似ていると思います。子供は、親が思うようには育たない。生まれ育った性格や様々な人との出会いによって、色を変えながら成長していくものでしょう。でも……どれほど色が違ってしまったからといって、親子でなくなってしまうわけではないんですよね」
『住んでいるから家族になる』
それは、ここでも言える。
深追い
平成19年5月1日発行
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コメント
本当に、「家族」のあり方を再考させられる悲しい事件が続きます。「一緒に住むから家族」なのか「離れていても家族」なのか、そういう風に区別がつけられない世の中のような気がします。一緒に住む あるいは成長する長い年月の間にお互いの中に培われていく絆があると思うのですが、最近は”自然に培われる。。。”が難しいのかもしれません。
積極的に、でもどの程度まで家族に関わるのかは、とても悩ましい問題です。
横山秀夫さんの作品、読んでみようと思います。短編集はチョコチョコ読めるので好きです☆
5/9の歯医者さん近くの”お花の風景”、余りに綺麗なので壁紙にさせて頂きました。また、いろんなお写真 楽しませてください♪
投稿: ぺっぺ | 2007.05.17 16:28
ぺっぺさん、お久しぶりです。コメントをありがとうございます。
今日は、風の強い一日でした。そちらではもっとスゴイのではと想像しています。
∥5/9の歯医者さん近くの”お花の風景”、余りに綺麗なので壁紙にさせて頂きました
あ、画質を落としているのでそのまま使えますか?
よかったら元の画像をお送りしますよ。
投稿: 涼 | 2007.05.17 19:15
有り難うございます。
お手間でなければ 元の画像を送って頂ければ嬉しいです。
鹿屋は結構山の上にあり、風は平均よりも強いと思います。
それが夏には気持ちがいいのです。
~洗濯物は、よく飛ばしますが。。!!~
大隈半島の南部の山頂には、風力発電用の”風車”が多く見られます。
なかなか壮観ですよ。
投稿: ぺっぺ | 2007.05.20 17:53
大きなファイルになるので、確認してからお送りします。
もっと鮮やかなテッセンが撮れたら、再送しますね。
投稿: 涼 | 2007.05.20 19:42