マクベイン【ノクターン】
ノクターン | |
エド・マクベイン〔著〕井上 一夫〔訳〕 出版 早川書房(ハヤカワ・ミステリ文庫) 発売日 2004.7 定価 ¥1,050 (本体 : ¥1,000) ISBN 4-15-070807-X |
アパートの部屋で発見された老女の死体。だが、その老女はかつて絶大な名声と人気を誇ったピアニストだったのだ。孫娘のために遺していた大金をめぐり、熾烈な争奪戦が繰りひろげられるが…。
ニューヨークタイムズの表紙を飾った、元名ピアニストが殺される。
彼女は関節炎を患う酔っぱらいの老女になっていた。
飼い猫も一緒に殺したのは誰か?
警察は、犯人になかなか近づけない。
キーワードは、金髪の男。
その男が、被害者が孫娘に残した遺産を入れていたコインロッカーの鍵を届ける。
一方、怪しげな商売をする人々でにぎわうこの町の夜は、別の犯罪を生む。
ピアニスト殺しとこれらの犯罪の接点は。
場面の切替が多く、テンポが非常に早い。
うっかりしていると、今どの話をしているのか見失ってしまいそうだ。
時々自作の披露をさりげなくしているマクベインだが、本書ではたびたびヒチコック監督の映画「鳥」が出てくる。
ウィリス、あんたひょっとしてアルフレッド・ヒチコックが書いた映画見てるか?マクベインは、映画「鳥」の脚本を書いていたのだった。
ウィリスはヒチコックがそれを書いたとは思わなかった。
犯人が逮捕され、お馴染み地方検事補のネリーが、弁護士と刑期について交渉する場面が面白い。
何だかやりきれなくなる話だったが、最後のページ。キャレラがやっと帰宅して買い物から帰った妻 を出迎える描写に救われる。
五分後にテディが戻ってきて、腰でそっとドアを閉め、食料雑貨で溢れそうなふたつの買い物袋を鏡のそばの椅子に置くのを彼は見守った。コートを脱いでクロゼットにかけている。沈黙の世界の彼女を黙って見つめ、考えていた。彼が日々の仕事に励んでいる、この暴力の街で……
ここ、この、日毎に暗さを増し、毎日が永遠の夜になる恐れがあるように思える世界で……
帰っていくことのできるテディがここにいる。
マクベインは、本名エヴァン・ハンターで「暴力教室」を発表している。これは当時かなり話題になった。
そこで思い出すのが、映画化の主題歌「ロック・アラウンド・ザ・クロック」。ロックンロールの始まりとされているが、ビートの効いた出だし部分が好きだ。
江利チエミが何の映画でだったか、夜の帰宅途中に怖くなってこの歌を歌いながら帰っていた。三人娘のそれぞれのヒット曲が散りばめられた映画だ。
それはそうと、このシリーズは、猛暑か厳寒の時期しか扱っていないのだろうか?
ノクターン
2004年7月31日発行
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