往く道
久しぶりに実家へ行くと、母がよく喋る。もっとも、かなり耳が遠いので、一方的なしゃべりになることが多い。つまり、自分の言いたい事だけ言ってひとの話は聞かないのだ。
人の格好や所作をつぶさに観察した挙げ句、「涼、髪の毛が茶色すぎないか」などと平気で言う(ほっといてんか!自分こそ黒く染めすぎ!)
今日は、老人会の仲間の多くが惚けてきたとひとしきりぼやいた。
自分では惚けたと思っていないから、役員をしている。だが、会合の日にちを忘れる。メモを書いて渡しておいても、それをどこへ入れたか覚えていないからなんにもならない。当人は忘れたことも忘れているから、呑気なものだ。
と、次々と出てくる。あげく、
「ああなったらコワイから、一生懸命惚けないようにしている」のだと言う。
例のえんぴつでなぞり書き関係の本を買っては渡していたが、結構こなしている。百人一首や俳句関係は喜んで(声に出しながら)書いているようだ。
笠智衆の「小津安二郎先生の思い出」と斉藤明美の「高峰秀子の捨てられない荷物」は、随分喜んでくれた。
「笠智衆は同世代だし、父親と雰囲気が似ている。デコちゃん(高峰秀子)の本は楽しみに読む」と、つれあいに託した時に、即ハガキをくれた。
そういわれれば、笠さんの表紙の写真など祖父そっくりだ。
耳は遠いが、まだ本はよく読めるのが救いだろう。新聞もよく読んでいるし、引っかかった言葉があると、メモをしておいて聞いてくる。もっとも電話だとなかなか通じないのが悩みで、やっとFAX受信だけはしてくれるようになった。
8月は休んでいるが、日曜日には若い人に手まりを教えている。しかし、会話は成り立っているのだろうか?
この、「自分勝手で言いたいこと言い」というのは自分もしっかり受け継いでいるので、やはり「往く道」だなぁといつもため息混じりに帰ってくるのだ。
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コメント
今日も非常に暑いこちらですが、大阪はいかがですか?
思わず、笑いながら読ませていただきました。
いくつになっても(失礼)、母は母、娘は娘。涼さんもしっかり娘さんしてらっしゃるのですね^^
お耳はともかく、お元気そうでなによりです。
私の場合、娘を放棄したくなることがちょっしゅうあるのですが、それも往く道と、心せねばと、この夏、避けて通った私は改めて思いました。
投稿: 桜桃 | 2007.08.26 20:58
桜桃さん (^_^)
先日の大雨以来、少しは暑さがましになったような気もします。
いやー、つれあいと息子のフォローのおかげで、なんとかもっているのかもしれません。
まったく、お互い遠慮の無いのも考えものです (^_^;)
投稿: 涼 | 2007.08.26 23:14
涼さんの娘ぶりを垣間見て、私もくすっと笑ってしまいました。
私も実家の母とは遠慮がないので、言いたい放題、言われ放題です。
自分では似てないと思っているのに、最近娘に「その言い方、おばあちゃんそっくり!」って言われることが多くて、血って恐ろしいですねー。実家には長期休みのときしか帰ってないのに、それでも年々似てきちゃうんですねー^^;
投稿: ぶんぶん | 2007.08.27 07:14
ぶんぶんさん (^_^)
∥最近娘に「その言い方、おばあちゃんそっくり!」って言われることが多くて
うちでも、息子によく言われますよ。
それでも、相手がワンテンポもツーテンポも遅れる分、ケンカになりにくくなってきたのが、ちょっと寂しくも感じる 今日この頃です。
投稿: 涼 | 2007.08.27 15:27