西村京太郎【宗谷本線殺人事件】
宗谷本線殺人事件 | |
西村京太郎〔著〕 |
千葉行きの往路で読んだもの。1990年2月、カッパノベルス。1993年4月、光文社文庫。本書は、今年2月が初版だ。
冒頭、フリーライターの田島が旭川から稚内行きの寝台急行「利尻」に乗るところから始まっている。
12月に入った旭川は、もう白銀の世界だ。
その駅で、一人の男に出会う。同じ物書きのようで田島は気になるが、その男とは南稚内でまたも遭遇する。
稚内空港での取材を終えて上りの急行「礼文」に乗るため、稚内駅よりは近い南稚内へと戻ったときだ。
親しみを感じて声を掛けた田島に、しかし男は迷惑そうな顔をするだけだった。
その男が美深に着く直前に車中で殺され、田島は男が持っていた原稿らしきものを預かる羽目になる。
それは二年前に音威子府であった殺人事件とも関連して、やや複雑な様相を見せてくる。根っこは東京にあるということで十津川警部が登場するが、事件追求と並行して語られる 鉄道や沿線の話が、郷愁を誘う。今はなき列車の編成図や音威子府駅の構内図なども掲載されている。
本書は「本線シリーズ」の最初だという。
北海道には現在 本線が8つある。もう一つ名寄本線というのがあったが、これは旧国鉄時代の本線で唯一廃止されてしまった。
当初の稚内駅は現在の南稚内駅で、延伸した稚内港駅が稚内駅と改称されたのだという。そのためか?、南稚内駅の方が大きいらしい。
天北線もここを起点としていた。
かつて、北から南まで、国鉄に全部乗ろうと思ったことがある。色々な事情でそれがかなわぬまま年月だけが経過し、その間 たくさんの廃線が生まれた。
せめて小説の中で、なくなってしまった列車に乗った気分に浸ってみよう。
宗谷本線殺人事件
2007年2月15日第1刷発行
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