東野圭吾【卒業】
卒業雪月花殺人ゲーム | |
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先生がなぜ俺を庇ってくれたのかは、俺にはわからない。たぶん理由なんかないんだろう。高校時代に俺の答案を添削してくれたように、俺の計画の不備を補ってくれたのじゃないだろうか。おそらく真実に一番近かったこの元教師を、犯人である「俺」はこう表現している。
ほぼ20年前の作品である。著者紹介には「本格派の大型新人」とある。本書はデビュー作「放課後」に続く二作目。フレッシュな書き方に好感を持てる。学生もので、探偵役も学生である。
大学4年の秋。就職、恋愛に楽しく忙しい仲よし7人組。その中の一人、祥子がアパートの自室で死んだ。部屋は密室。自殺か、他殺か!?残された赤い日記帳を手掛りに、死の謎を追究する友人たち。 だが、第二の全く異様な事件が起って……。錯綜する謎に挑戦する、心やさしき大学生・加賀恭一郎。卓抜な着想と緊密な構成で、現代学生のフィーリングを見事に描いた、長編ミステリーの傑作。(帯より)
友人の一人祥子の死の真相を探っていた波香も、不審な死を遂げる。そのことと剣道の試合に於いて薬が仕掛けられていたこととは、どう結びつくのか?
大部作だが、飽きさせることはない。しかし、犯人が比較的早い段階で絞られてしまうのが残念だが、それでも興味はつながっていく。
結局加賀が辿り着いた結論は真相ではなかったのだが、それも一つの終わり方だろう。
この加賀がシリーズにならないかと思ったのだが、教師志望ではそうもいくまい。
だが、加賀恭一郎刑事というのが後年の作品で出ており、その内の一冊は読んでいる。犯人あての小説で、そこで登場したのが加賀刑事だというのだが、印象にはない。この学生探偵との関連はなさそうだ。
剣道と茶道という、一見関係なさそうな、しかしどちらも長い伝統を持っている文化をうまく配して、楽しめる本だ。
著者は高校時代、剣道をなさっていたという(大学ではバトミントンで、これは「ガリレオ」の湯川に生きている)。
余談だが、関西の学生の喋る言葉がまともだと思ったのだが、著者は大阪出身だという。
ちょっと矛盾を感じること(ネタバレあり)
薬を入れたのが若生ではなく華江だったのなら、何故大詰めでの告白を若生がしようと言い、華江が止めるのか?
卒業
昭和61年5月20日第1刷発行
昭和61年7月25日第2刷発行
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