東野圭吾【悪意】
悪意 | |
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犯人が捕まってからが始まりのような、ちょっと不思議なミステリー。
東野ファンの中でも、この犯人に嫌悪感を持つ人は多い。
何故犯人は、動機を語ろうとしないのか?
この事件の根は当事者たちの中学時代にあると思った刑事加賀恭一郎は、丹念に過去を調べ始める。
そこで明らかになってくる、それぞれの背景。
冒頭、ネコのことで瞞されたという人が多いようだが、これはむしろ注目点というか違和感を持てるところというべきか。
犯人の悪意の芽生えが、母親のいわれ無き偏見であったとすれば、彼もまた「悪意」の被害者であろう。
もう一点、本書では加賀が教師を辞めたいきさつが語られる。
事件の真相を知るために過去を尋ねていく加賀だが、その中で否応なく自分自身の過去とも向き合わなければならない。辛い過去と。
加賀は、教職を辞めたことを、「逃げた」と言っている。だが、そうした経験を踏まえて教師は成長していくのだろう。しかし、教師にとっては一つのステップではあっても、子どもにとってはただ一度の学生時代だ。
勿論、刑事に転身したからこそこれらの小説が生まれるという前提を抜きには出来ないのだが。
犯人にとっても、加賀にとっても、読者にとっても、辛い小説ではある。
悪意
2001年1月
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