海堂尊【医学のたまご】
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僕は曾根崎薫、14歳。ひょんなことから大学の医学部で研究をすることになっちゃった! 中学生なのに医学生なんてムリムリ。なのに、しょっぱなからすごい発見をしてしまったらしい…。コミカルで爽やかな医学ミステリー。
これも、ご縁があった本。朝日新聞の書評欄2月10日付「著者に会いたい」で登場。ちょっと惹かれて、本購入リストメモには、「文庫化待ち」と書いている。
すっかり忘れていたのを、先日パラパラと見ていて目に留まった。ちょうど「チームバチスタの栄光」を読んだ時だったので、文庫化を待たずに購入。
利用対象は、 「小学生 中学生」と ある。
だが、お子さま向きだといってバカにしてはいけない。「チームバチスタの栄光」と同じく、今度は少年が見た医学の矛盾を突いている。
主人公の中学生 薫の父は、高名なゲーム理論学者。そしてアメリカに住んでいる。
その為薫は、家政婦の山崎さんと二人暮らしをしている。
ひょんなことから全国テスト一位になった薫は、中学在学のまま 大学の研究室に通うことになる。薫は、通学に使うバスの中で、眼帯をした少年カイに会う。
大学には、研究医桃倉さんとスーパー高校生医学生の佐々木さんがいた。
大人に翻弄され、危うく崩れそうになる薫を救ったのは、アメリカから適切な助言を与えてくれたパパだった。
薫は勿論、桃倉さんやカイも、ゲーム大好きだ。最後には、そのゲームを解くようにして、薫は窮地から救われる。
しかしその為に、薫は大事な人を失った。成長する過程で必ず訪れる、人との別れ。
パパは、メールでこう伝えてくる。
君は大切な人を失ってしまったかもしれない、と言った。それは仕方のないことだ。何かをしたら、何かを失う。それが怖くて人は何もしなくなっていく。でもそれは間違いだ。
カオルは大切な人をうしなってしまったと考えているかもしれない。でもそれは、ほんの束の間、君の前から姿を消すだけ。
その人の心の中には、カオルが勇気を持って立ち上がった姿がずっと生き続けるだろう。君の心の中で、大切なその人の勇気ある姿がいつまでも燦然と輝いているのと同じように。
悪役と善人がスパッと描き分けてあって、大変判りやすい。
カイと佐々木さんの秘密も、比較的容易に想像がつく。
ゲームの要素を取り入れながら、専門的な説明も(多分)手抜きをせずに描いてある(と思う)。
薫が通った大学は、「チームバチスタの栄光」や「東京二十三区内外殺人事件」の舞台だった 東城大学。勿論、スカイレストラン「満天」も、おいしいうどんを提供してくれる。
そして、あの高階学長も登場して、最後の審判をする。
理論社の「ミステリーYA!」というシリーズの一冊のようだ。
横書きだというのも、現代風と言えるかもしれない。
医学のたまご
2008年2月第3刷発行
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