東野圭吾【魔球】
魔球 | |
東野 圭吾〔著〕 |
昭和39年。オリンピックの年、東海道新幹線が開通した年。
冒頭、その年の春、場所は甲子園。9回裏二死満塁。開陽高校の天才投手須田武志が崩れる。そして、捕手は魔球を見た。
その少し前、開陽高校のある町の東西電機で、爆破物が置かれるという事件が起きる。
そして選抜高校野球後、須田武志の珠を唯一受けることの出来た開陽高校野球部の捕手 北岡明が殺される。
一見関係なさそうな二つの事件には、巧みにはられた伏線があった。
著者は何故、敢えて舞台を昭和39年に持ってきたのだろうか。「三丁目の夕陽」で懐かしがられているこの時代は、まだ戦後のドサクサを引きずってもいたのだ。
傲岸不遜とも言える須田武志の、孤独とやさしさ。母への愛と、兄弟愛。
ふと、宮部みゆきの「パーフェクトブルー」を想起させもするが、それよりも時代を背負った彼らの生き方の方が、より厳しいものがあったろう。
ミステリーでありながら、それを超えるものを持っているのは、著者の優しい目線であろうか。
縦糸にこれらの事件を置き、横糸には野球部監督と同窓の刑事、高校教師の恋人が絡む。
高校野球を描いた、秀作である。
最終部分、24年後の須田有樹の日記は必要だっただろうか?
魔球
1991年6月15日第1刷発行
2007年7月20日第45刷発行
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