矢口敦子【償い】
償い | |
矢口 敦子〔著〕 |
探偵役は、ホームレスになっている元エリート医師。妻と子を亡くすという過去を持つ。
今は名前を失っているこの日高が流れてきたのは、かつて誘拐犯から赤ん坊を救った少年の住む街だった。
そこでは、ホームレス襲撃や車椅子の女性殺害など、次々と事件が起きる。
偶然自分が助けた少年と出会った日高は、一連の事件の犯人が少年真人ではないかと悩む。自分が救ったがために、彼は凶悪な犯罪者になってしまったのでは……
日高を引き込んで事件の真相に近づこうとする警察官山岸も、なにやら曰くありげだ。
その山岸や、彼の親戚であるナースの三井。彼らもまた、日高が赤ん坊を救った事件の関係者だった。
標題の「償い」は、日高が妻子を亡くしたのは自分のせいではないかと思い悩み、それへの償いをしようとしているというところから。
両親と弟が火事で亡くなってしまい、長男だけが残される。その彼が自分を取り戻し、成長を見せる場面がいい。
人間関係がやや入り組んで、しかもかなり狭い範囲で重なり合っている偶然性が惜しいが、一気に読ませる佳作である。
最終章「生きていていいんだ」は、やや唐突な感がないでもない。
償い
平成15年6月15日初版発行
平成20年4月20日16版発行(版ではなく刷だと思うのだが)
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