◆高田崇【鎌倉の闇】
鎌倉の闇 | |
高田崇〔著〕 |
銭洗弁天、鶴岡八幡宮、御霊神社…鎌倉をそぞろ歩く奈々、沙織の棚旗姉妹に、桑原崇が説く「鎌倉=屍倉」の真実! 源三代にまつわる謎の答えが、闇の中に白く浮かび立つ!「QED」第8弾。
武家政治を開いた頼朝は傀儡であったことや、源家三代(頼朝・頼家・実朝・公暁)の悲劇と共に、鎌倉の歴史的暗部を崇に語らせている。
並行して、鎌倉市内のとある会社で起きた事件の話とが、交互に展開する。
あまり大部でない本書の半分が、鎌倉の暗部についての話で占められている。
そして、これまでのシリーズと違って、崇達は直接事件に係わってはいない。最後部、崇は言う。
これから起こりそうな事件を未然に防ぐためならば、いくらでも協力を惜しまないが、すでに起こってしまった事件の解決ならば、専門家に任せておいた方がいい。
崇の話の中には杉本苑子氏の考証といった言葉も散見され、単に小説としてというだけではなく、かなり事実に近い部分が多いように思う。
杉本苑子氏と言えば、「新とはずがたり」で鎌倉を描いている。
『五名水』や『鎌倉七口』と呼ばれる切り通しのことなど、以前から関心のあった興味深い話も多い。
しかし、スペースの関係もあるのか、肝心の事件については、ややおざなりな感がある。
社長ではなく副社長が実質的な権力者で、社長は傀儡に過ぎなかったというあたりで、頼朝と北条家との類似性を持たせようとしているのかもしれぬが。
両者とも『名前さえあれば存在していなくとも良かった――』
最後にひとり「ほくそ笑む」関係者にしても、あまりにも唐突な感がある。
本書の前作「龍馬暗殺」から参加しているらしい奈々の妹沙織が騒々しく邪魔である。
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