星新一【にぎやかな部屋】
にぎやかな部屋 | |
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著者にしては珍しく、ショートショートではなく、中編だ。
マンションらしきところの一室。住民は、三人。父と母と娘。
ところが、それぞれの背後には、霊がとりついている。
娘の霊は、まだ霊になったばかりの老人。現世では、会社の社長だったようだ。
父母についているのは、現世で結ばれず心中をした若い男女。
父親の仕事は、金融業。というより、金貸しだ。母親は、占いを業としている。
このマンションの一室がそれぞれの職場で、お客によって暗い神秘的な部屋にもなれば、明るいビジネスの場にもなる。
そこへ登場する、お客たち。それぞれ自分たちの霊を連れてくる。当然、生身の人間には霊は見えないし、声も聞こえない。
と、まるで舞台を見ているような展開だなと思って読んでいたのだが、著者自身のあとがきによると、戯曲を書いて欲しいと言われて完成した作品のようだ。
こうして、一幕ものの舞台には、様々な人たちが入れ替わり立ち替わり現れ、消えていく。
登場人物それぞれに、イメージする俳優を当てはめて読めば、又違った楽しみ方が出来よう。
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