佐藤多佳子【サマータイム】
サマータイム | |
佐藤多佳子〔著〕 |
進と姉の佳奈、二人の共通の友人、広一。
四つの物語は、三人の独白で進んでいく。全編に流れる、「サマータイム」のメロディ。
広一の母、プロのジャズピアニストの友子さんは、不思議な魅力的な人だ。
夏やすみにプールで出会った進と広一は、帰る途中で雷雨に遭い、進は初対面の広一の家で休ませて貰う。
広一の左手は事故で失われていて、そのため彼はずっと習っていたピアノを片手でしか弾けない。
この友子さんと広一は、不思議な親子だ。しかし、母親が息子に抱く感情も、息子が母親に持つ気持ちも、解るような気がする。
「サマータイム」と題した最初の一編で、登場人物の紹介があり、しかし彼らの交流は、広一母子の引っ越しで一旦終わる。
それから6年が経ち、進は高校生になって、ジャズ研に入っている。
大学生になった広一は、ある日進を訪ねてくる。
自転車に乗ることを怖がって佳奈を怒らせた広一は、片手だけで佳奈を荷台に乗せて漕げるまでになっていた。
右腕一本のハンドルさばきで、彼の自転車はぐんぐん加速していく。二つの車輪が八月の光をけちらした。(中略) ぼくの頭の中でふいにピアノの音が踊り出した。 右手だけの力強いサマータイム。
サマータイム
平成15年9月1日発行
平成19年10月5日第10刷
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