島田荘司【最後の一球】 つづき
奇跡が起こったよ石岡君−。「2番手の男」が投じた友情と惜別の一球が、御手洗も諦めかけた「事件」を打ち砕く! 心踊る感動の青春ミステリー。御手洗潔シリーズ長編。
(画像は2006年11月原書房発行のもの)
物語は、御手洗も半ばあきらめた事件が、金融業者のビル屋上の火事で解決するという展開を見せる。
火の気のないところで、なぜ火が出たのか?
そこへの過程の真相を、竹谷のモノローグ(御手洗に宛てた手紙)が語っていく。
借金の保証人になった父親が自殺した後、母と二人貧しい中で育った竹谷は、プロの選手になることだけを視野に入れて、野球に打ち込む。
だが、コントロールは抜群だが今ひとつ迫力がなく変化球も投げられない彼に、プロへの道は遠かった。
大学へ行ってもっと練習すればあるいはということもあったろうが、家庭の事情が許さない。
あきらめて地元企業に就職した彼は、社会人野球で生き延びようとする。
一方、高校時代に出会った逸材武知は、大学を出て社会人野球でも際だった才能を見せていた。
その彼とまみえたことは、彼ら二人の運命の出会いだったのだろう。
やがて武知はプロへ転向し、縁あって竹谷も同じチームに入る。
そして武知との絆が深くなっていき、やがて武知は……
ちょっと感動的な話である。
一軍で脚光を浴びることなく球界を去っていく選手を描いた「ボール犬ミッキー」もそうだったが、運良くプロに入れても活躍出来るのは、ほんの一握りの選手だけなのだ。
多くは、開花することなく二流のままで終わって行く。
竹谷が投げた最後の一球は、打った武知にとっても、最後の一球だった。
そしてそのボールは、もう一度だけ、竹谷の渾身の【最後の一球】として、投げられたのだった。
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島田荘司【最後の一球】(09.07.29)
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