宮下奈都【スコーレNo.4】
宮下 奈都 著
税込価格: ¥600 (本体 : ¥571)
出版 : 光文社
ISBN : 978-4-334-74678-0
発行年月 : 2009.11
利用対象 : 一般
人生には4つの小さな学校がある。家族、恋愛、仕事、そしてどうしても忘れられないもの、拘ってしまうもの、深く愛してしまうもの。そういうものこそが扉になる−。日常の丹念な描写から見つめる、ひとりの女性への道のり。
No.1は、中学時代。
いつも地味な色の服しか着せてもらえなかった主人公麻子は、「きれいな青」をイメージさせる 木月と出会う。だが、ようやく口をきけるようになった彼は、夏休み中に転校してしまう。
ずっと麻子の中で比較の対象になるすぐ下の妹 七葉との葛藤も、既に始まっている。
七葉は、何もかも自分のものにしないと気が済まない。そうした妹と仲良しではあるが、麻子は常に一歩引いてしまい、それもあって消極的な、自分を必要以上に低く評価する癖がついている。
No.2は、共学の高校時代。
そこへ登場するのが、従兄の愼だ。
彼を慕いつつ、しかし彼からは色々なことを教えてもらうということ以上には、進まない。
ここでも、七葉の積極的な行動によって、麻子の恋は破られる。
愼とは、彼の海外転勤による別れが待っていた。
No.3では、語学を活かして就職したはずの輸入業者から出向の形で赴く、インポートもの専門の高級靴店での苦労。
その中で、思いがけず自分のセンスを見つけた麻子は、徐々に自分を発揮できるようになる。
No.4で本社に戻った麻子は、そのセンスを出せないまま、慣れない事務作業に苦労する。
その転機になったのは、他課の同僚との海外出張だった。
生き生きとイタリアの靴業界で買い付けをして帰国した麻子は、さらに服装やアクセサリーとのコラボレーションまで提案できるようになっていた。
だが、海外出張の一番のお土産は、一緒に行った茅野と親しくなったことだった。
穏やかな、包み込むような彼との将来を暗示して、物語は完結する。
麻子の考え方・行動の原点になっているのは、生家の骨董品店だ。父の薫陶を知らず知らず受けた育っていた麻子は、自然にものの善し悪しを見るセンスが育っていたのだろう。
その生家へ茅野が昔通っていたという話はうまくできすぎているが、さわやかな読後感が得られる良書である。
麻子の生き方に 共感出来る部分を見つける人は、多いだろう。
即追記 → 概要も追記
アップしたあと朝刊を読んだら、朝日の「売れてる本」で、本書が紹介されていた。
ふーん、Twitterで書店員が仕掛けたのか!
スコーレNo.4
2009年11月20日第1刷発行
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