津原泰水【ブラバン】
津原 泰水著
税込価格: ¥620 (本体 : ¥590)
出版 : 新潮社
ISBN : 978-4-10-129271-7
発行年月 : 2009.11
利用対象 : 一般
1980年という醒めた熱狂の季節に、音楽にイカれバンドに入れあげるボーイズ&ガールズが織り成す、青春グラフィティ。クラシックの、ジャズの、ロックの名曲にのせ、総勢34名のメンバーが繰り広げる大群像劇。
初めての作家。少女小説やホラー小説などが、あるらしい。そのうちの一つは、このミスにも選ばれているようだ。
本書は、本屋で偶然見つけて購入したもの。
現在と25年前を行きつ戻りつ、高校時代の吹奏楽部がバンドを再結成させて演奏するまでを描く。
語り手であるバス奏者の目から見た事柄を淡々と述べているだけだが、やはり25年という歳月は無惨である。
舞台は、広島市。はやらない酒場を経営している他片(たひら→たいら)=僕の前に現れた先輩が、自分の披露宴にかつての仲間を集めて演奏をして欲しいと持ちかける。
そこから連絡を取る形で当時のメンバーを紹介していき、高校時代の話に触れていく。
幾つかの逸話の中で、好きだったところを挙げてみる。
授業をサボってローマ法王の話を聞きに行った僕が帰校したとき、担任に見つかる。その時の、担任の処置。
新聞配達をしながら、(ブラバンではなく)軽音楽同好会のエレキギターを買いたい僕に、 (返済を条件に)ギターを買ってくれた父の逸話。
この家族は、最後の軽音の演奏会も、見に来てくれる。
だが、25年後のボクの暮らしは……
現在の話では、やはり道後温泉で送迎バスの運転手をしている辻の話がよかった。ネタバレになるが、右手を事故で失ってベースを弾くことを出来なくなっている。
昔のガールフレンドを見つけて、彼女が独り身なら待っていると伝えて欲しい、幸せな家庭を気づいているなら黙っていて欲しいと頼む 辻。
後日 連絡が取れた彼女は、幸せな家庭を築いていた。
披露宴演奏会への参加者も増えてきた頃、当の本人が破談になったことを告げる。
それまでの練習はフイになる。
だが、それを救ったのは、現母校の倶楽部の顧問であり先輩でもある教師の、粋な計らいだった。
『人生とはそんなもの』という括り方は乱暴だが、そんなものなのだろう。
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