孤独な夜のココア
田辺 聖子著
税込価格: ¥460 (本体 : ¥438)
出版 : 新潮社
ISBN : 978-4-10-117511-9
発行年月 : 2010.3
利用対象 : 一般
短編集ではあるが、表題作はなくて、12編の短編全てが【孤独な夜のココア】なのだろう。
最初の発行は昭和53年だとある。
読んだのは文庫本だったような記憶があるので、それから5年後くらいに発行されたものだったのだろう。
いずれも、当時ハイミスと呼ばれた働く独身女性の話である。
当時もかなり切なく感じた作品もあったが、30年以上経った今回読み直してみると、いわゆるOLたちの悲喜こもごもがいっそう切なく感じられる。今なら感じなくてもいいような悲哀ではなかろうか。
【春つげ鳥】
倍ほどの年齢差のある妻子持ちと恋仲になった、碧。
妻は子どものことにかまけて東京へ行ってしまい、残された彼は碧と暮らす家を見つける。そこは山の中腹で海が見えた。
長男が就職したら妻と離婚して正式に結婚しようと彼は約束したのだが……。冒頭から悲劇を予想させる物語であった。
今だったら、おそらくどうと言うことのないだろう
【遅すぎますか】
仕事をこなし、妻としても申し分なく夫に仕え、それでも帰宅が遅いからと言ってグチる夫。出張前に用意しておいた食事にも口をつけず、あげく浮気をする夫。
「妻は家にいて夫の方だけを見ているべし」という時代ではなくなっていたが、現実には働く妻はなかなかしんどかったのだ。
そんな中で、
【エープリルフール】は良かった。会社の同僚と割ない中になって妊娠してしまう「わたし」。出張中にそれがはっきりするのだが、帰ってきた彼には冗談めかした言い方しかできない。
彼は旧家の跡取り息子で、「わたし」は初めから結婚など考えていない。
しかし、その夜遅く彼から電話があり……
他に、
【りちぎな恋人】
【雨の降っていた残業の夜】
【春と男のチョッキ】
【ひなげしの家】
【愛の罐詰】
【ちさという女】
【石のアイツ】
【怒りんぼ】
最後の
【中京区・押小路上ル】は、舞台が京都。
いつも近所の目にさらされていて、出て行きたいと思っている京女。
そんな彼女だったが、いつも幼なじみの男の子と伝統行事には参加してきた。
その彼女が、叔母に連れられていった西陣で見た光景で、伝統の良さに気づく。ちょっと出来すぎ感はあるが。
解説が綿矢りさというのが、なぜかおかしい。
孤独な夜のココア 昭和58年3月25日発行
平成22年3月1日三十六刷改版
最近のコメント