山川方夫【夏の葬列】
今読んでいる本に、野辺送りの場面がある。
そこで、なんの脈絡もなく思い出したのが、山川方夫の【夏の葬列】である。
何かの短編集にはあるかもしれないが、自分は、中学の教科書で読んだ。
主人公は、戦争中に自分を守ろうとして駆け寄ってきた少女を、突き飛ばして機銃の犠牲にした(と信じていた)過去を持つ。白い服は敵から見えやすいので、近寄らせなかったのだ。
その罪悪感から、彼は長くその町を訪れることが出来なかった。
しかし、その過去を清算するために、十数年後に町を訪れる。
そこで遭遇したのは、当時の面影を残した写真の人の葬列だった。
彼女は当時は生きながらえて、今死んだのだ。
そう知った主人公は、長かった呪縛から解き放たれた気持ちになる。
しかし、事実は!
最後のどんでん返しは、ミステリだとも言える。
また、主人公の気持ちを読み解いていくという点では、まさに教科書向きと言えるかもしれない。
もう一つ、本書を思い出した故の連想で、これは確か横光利一だったか、【蠅】も印象に残っている短編だった。
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