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2011.06.06

松本清張【危険な斜面】

危険な斜面

危険な斜面松本 清張著
税込価格: ¥550 (本体 : ¥524)
出版 : 文藝春秋
ISBN : 978-4-16-769712-9
発行年月 : 2007.11
利用対象 : 一般

男というものは絶えず急な斜面に立っている。爪を立てて上に登って行くか、下に転落するかだ──。


10年ぶりに出会った女は、自分の勤める会社の会長の愛人だった。その暮らしから逃れたい女と、女を利用して出世したい男と。
あとは【危険な斜面】を昇りつめられるかどうか、という表題作。
最後通牒を突きつけたのは、意外なところからの第三の人物だった。

将来に絶望した男が会社の金を拐帯して、これも惨めな環境に泣く女を連れて死を覚悟した逃避行に出る【拐帯行】。
これにも、決して古くささを感じない。今も同じような時代になっているのではないか?
最終部分、旅の先々で出会った老夫婦から受けた影響の話を聞いた検事の心の声に救われる。


【失敗】は、文字通り、犯人が立ち回るであろう家での張り込みに失敗する刑事たちの話。
部下の話を聞いた上役が、真実を見通して ある意味粋な計らいをする。


【二階】や【巻頭句の女】は、初出当時に読んでいた。
どちらも、内容をほぼ覚えている。
最近のように、読んだら即忘れてしまうのとは大違いだ。
いや、【二階】は確か加藤治子での映像を見たような記憶が……(勘違いかな?)


最後の【投影】は、いかにも清張的で面白かった。
初出は、昭和32年とある。
上役とけんかして新聞社を辞めた新聞記者。水商売をしていた妻と二人、地方都市に落ちてきた。小さな新聞社に勤めて、糊口をしのぐ。
そこの腐りきった市政で起きる、殺人事件。
収入を得るために働き出した妻の協力も得て、その真実を暴く。

自分のみをふがいなく思い時に涙する主人公だが、市民の中に自分が勤める新聞を愛読している人を見つけて、希望を抱く。
妻がお金に目がくらんで市の実力者に云々という展開にならず、ある意味ハッピーエンドになったことに、救われる。


昭和30年代というと、よく『三丁目の夕日』的な暮らしが思い浮かぶようだが、こうした小説もよく読まれていたのだ。

バブルを経由し、ネット時代になって、世の中全体が豊かになったような錯覚に陥っている。だが、先行き見えない不安な暮らしということでは、この頃とさほど変わりないのではなかろうか。


危険な斜面
文藝春秋
2007/11/10 出版
2011/05/13 Reader™ Store発売
304ページ

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