堂場瞬一【帰郷】
帰郷
堂場 瞬一著
税込価格: ¥800 (本体 : ¥762)
出版:中央公論新社
ISBN 4-12-204651-
発行:2010年2月
父の葬儀の翌日、一人の若者が訪ねてきた。新潟県警鬼の一課長と呼ばれた父にとって唯一の未解決案件を再捜査しろというのだ。奇しくも時効は葬儀の当日であった。遺品の備忘録に綴られる捜査への飽くなき執念、不審な元同僚、犯人と名指しされた男、そして謎の記号――父が遺した事件を追って雪の新潟を鳴沢、疾る!
ということだが、初めての作家。刑事鳴沢了としてシリーズの第五作らしい。何カ所か、これまで登場したであろう人物について軽く触れられているが、しつこくなくていい。若干説明不足かとも思えるが、話の展開に無理があるわけではなく却って邪魔にならない。
父の葬儀で、かつてそこで勤めていた新潟に「帰郷」した主人公。
時効になった事件の犯人を名指して現れた、被害者の息子 正明に振り回される形で、話は進んでいく。
大きなテーマは、「父と子」か。
鳴沢自身、父との大きな確執を抱えていた。それが、父が唯一解決できなかった事件を(個人として)追う中で、その父との距離を縮めていく。
息子を愛しながらも、「鬼の一課長」で接していた 父。
そしてもう一組の「父と子」があった。
それは、子に愛を感じている父親には決して信じることの出来ない世界であり、盲点となった。
子の刑事は、最後にそれに気づく。
鳴沢には恋人がいて、その息子からも慕われている。
それとの対比で浮かび上がってくる、もう一組の親子。
正明が「事件当時犯人を見つけてくれていたら」と言い続けていることが、大きな伏線になっている。
もう一つのテーマ?は、「嫉妬」か。
同期で交通課への勤務からようやく刑事になった安藤。こうした屈折を抱いたままでは、なかなか成長しないだろうな。
いや、そうしたやっかみは被害者とその元同僚にもあるようで、それがミスリードへ導こうとしている。
事件関係者以外では、上記恋人母子と元の部下大西海(かい)の描写が面白かった。
特に大西は、服装だけでなく刑事としてもぐっと成長したようだが、鳴沢を慕う姿勢がかわいい。
過去の映像化では、大西を(勝地)涼君が演じていたようだ。
他に、正明が育った施設の一つ年上の園生で、事件の重要な鍵を思い出す三富の存在がよかった。短時間の登場だったが、生き方の一つの指針を示してくれているようだ。
堂場瞬一作品
堂場瞬一【帰郷】(11.07.04)
堂場瞬一【雪虫】(11.07.28)
堂場瞬一【孤狼】(11.09.27)
堂場瞬一【破弾】(11.10.09)
堂場瞬一【讐雨】(12.03.27)
堂場瞬一【虚報】(12.05.16)
堂場瞬一【血烙】(12.07.30)
堂場瞬一【被匿】(12.08.21)
堂場瞬一【ラストダンス】(12.09.07)
堂場瞬一【長き雨の烙印】(12.09.16)
堂場瞬一【七つの証言】(12.09.27)
堂場瞬一【疑装】(12.11.24)
堂場瞬一【アナザーフェイス】(12.12.03)
堂場瞬一【約束の河】(12.12.05)
堂場瞬一【敗者の噓】(12.12.19)
堂場瞬一【断絶】(13.01.10)
堂場瞬一【逸脱】(13.01.22)
堂場瞬一【蝕罪】(13.02.10)
帰郷
中央公論新社
2010/02/06 出版
2010/12/10 Reader™ Store発売
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