長野まゆみ【鳩の栖】
長野まゆみ 著
税込価格: ¥420 (本体 : ¥400)
出版 : 集英社
ISBN : 4-08-747124-1
発行年月 : 2000.11
利用対象 : 一般
「きみにも、叫びたくなることがあるの」「あるよ、この頃はとくに」。雨音のはざまに響くその音に、病床の少年は何を思うのか。転校した学校で知り合った少年との清々しく、張りつめた交流。静謐な世界を描く5編。
まずは、表紙絵に注目。以前はどこにでもあった木造校舎のようだ。
すこしボンヤリとしているのと、書名がかぶっているので判りづらいが、「長野まゆみ」の文字のところが正面玄関だろう。実際の表紙は、もっとはっきり見える。
そして、ちょうどこの三週間通っていたところが、こういう校舎をそのまま生かしているのだ。
昨日持参して見ていただこうと思っていたのに、事故のせいで忘れてしまった。次回(年明け早々)、必ず持って行こう!
さて中身だが、紹介文にある表題作の他、
【夏緑陰】
【栗樹―カスタネア】
【紺碧】
【紺一点】
の4篇が収録されている。
中でも、父親の再婚で兄と別れて暮らす少年寧(やすし)を描いた【夏緑陰】がよかった。
父親がなくなり、残った義母とのちょっとだけぎくしゃくした関係や、兄との再会。
登場人物はみな優しく、思春期の主人公を包み込んでいる。
同じ「紺」で始まる最後の二篇は、連作だ。
こちらは姉を亡くして義兄と暮らす高校生の話。
再婚話が持ち込まれる兄と同居するのを遠慮する、亨(とおる)。その兄は、通っている学校の教師であり、クラブ活動の顧問でもある。
そこに実力者の息子である同級生 真木との友情を絡めて描いていく。
いずれも、ゆったりと時が流れていく、大正時代のような錯覚を起こす。
だが、時代はほんの15年ほど前の話だ。
あちこちにちりばめられた古風な言葉が、懐かしくゆかしい。
と書いたが、なぜか「ひと段落」というセリフがあって、少々興ざめした。この時代だし(現代にまで至っていないということ) 教師という設定ならば、たとえ会話でもあり得ないのではなかろうか?
各編の最初に掲載されている画は、著者の作品のようだ。
鳩の栖 2000年11月25日第1刷
2011年6月6日第6刷
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