【ハティのはてしない空】
カービー・ラーソン 著 杉田 七重 訳
税込価格: ¥1,680 (本体 : ¥1,600)
出版 : 鈴木出版
ISBN : 978-4-7902-3246-9
発行年月 : 2011.7
利用対象 : 一般
【ニューベリー賞オナーブック(2007年)】【モンタナブック賞(2006年)】20世紀初頭、アメリカ北西部のモンタナで、両親のいない16歳の少女ハティは、おじの遺言をうけ、たったひとり、土地の開拓に挑む。厳しい暮らしのなかの、あたたかな心のふれあいを描いた物語。
時は第一次世界大戦の頃。アメリカからも多くの男が兵士としてヨーロッパへ渡っている。ハティの元同級生チャーリーも、志願して戦争に行った。彼に出す手紙と、彼から来る手紙からも、戦争が刻一刻ひどくなっていく様子がわかる。
銃後?でも、きな臭いにおいがしてくる。
ハティを駅まで迎えに来てくれた隣に住む夫妻の夫カールは、ドイツ人だ。彼らは様々な嫌がらせを受ける。その嫌がらせは、カールを友達だというハティにまで及ぶ。
家畜小屋を焼かれ、牛を失ったカール夫妻にハティが牛を譲って、生まれてくる赤ん坊のために二人でキルトを作り始めた頃の描写。
生きていくうちには、土地を自分のものにするよりも大きなことがあるのだと、気づきはじめてきた。わたしはいま自分の人生を自分の手でつかもうとしているのだ。
ハティ自身も、平原の隣人たちも、否応なく戦争に巻き込まれていく。ただ正直に国民として過ごしているだけで。
それにしても、何と過酷な生活だろう。せっかく刈り取った亜麻や小麦を、雹ががたたきのめしていく。「白い死神」によってもたらされた、「夢の 葬儀」。残ったのは、どう計算しても返せない 借金。
ふりかえればモンタナは約束を守ってくれた。大平原で過ごしたあいだに、わたしは自分の居場所を見つけたのだ。自分の心のなかに。そして、出会った人々の心のなかに。
著者は最後の「覚え書き」で書いている。
この本を書き出した時期は、イラク戦争が勃発した時期とほぼ重なっていました。1918年には商店が「ザウアクラウト」を「リバティ・キャベツ」と呼ぶようになったという記述を呼んだのが、2003年。ちょうどそのころ、イラクへの即時攻撃に異を唱えたフランスに対して、レストランでは「フレンチフライ」を「フリーダム・フライ」と呼ぶようになったというニュースが流れました。1918年の生活をくわしく知れば知るほど、現在の状況と似ていると思えてきました。
録音図書製作中です。コンテンツアップも見越して。
ハティのはてしない空
2011年7月21日初版第1刷発行
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