道尾秀介【花と流れ星】
道尾 秀介 著
税込価格:¥560 (本体 : ¥533)
出版 : 幻冬舎
ISBN : 978-4-344-41853-0
発行年月 : 2012.4
利用対象 : 一般
死んだ妻に会いたくて、霊現象探求所を構えている真備。その助手の凛。凛にほのかな想いを寄せる売れない作家・道尾。3人のもとに、傷ついた心を持った人たちが訪れる…。人生の光と影を集めた全5篇を収録。
シリーズもののようである。
どうやらデビュー作の【背の眼】で登場して以来、この三人はコンビを組んでいるようだ。
道尾秀介というとホラー作家というイメージがあるので、何となく敬遠していた。
はじめて読んだのは【ソロモンの犬】で、これはそうしたホラー的な面は少なかった。この本は好きなものの一つである。カバー絵が可愛かったというのも影響があるかもしれない。
もう一冊、【向日葵の咲かない夏】は余り好きになれなかった。
少年の死を扱ったものであったからかもしれない。
さて本書は、上記三人を軸に5編の短編からなっている。
三人とは、死んだ妻に会いたくて霊現象探求書を開設している真備。亡き妻の妹で助手を務める凛。二人が経営する事務所を訪れてくる、というか凛に会いたくてやってくる道尾という売れない作家という組み合わせ。
著者の名前を使っているのが、ご愛敬か?
【流れ星の作り方】
これは凛が語り手。
先の【背の眼】が解決して慰労のために訪れた宿から飲み物を買いに出て、一人の少年に会う。
彼は「流れ星は作れる」と言い、凛はそれを真似るがなかなか現出しない。しかし少年の身の上を聞いている内に流れ星を作れるようになり……
オチに少し矛盾がないかな?考えつく解法ではあるが。乙一の何だったっけ(タイトルを思い出せない、暗がりでの話)を想起させる。
【モルグ街の奇蹟】は、ポーの【モルグ街の殺人】を意識させつつ、やや違う展開を見せる。
【オディ&デコ】は、少女の怖さを見せる。友達はすなわちライバル。しかし、猫が生きていてよかった。
【箱の中の隼】
せっかくお土産持参で尋ねていった事務所で二人につれなくされた道尾の冒険譚。
【花と氷】
友達の結婚式に出席する凛。今回の相談者は孫を亡くした老人。
ブーケプルズで当たってしまった凛。しかし、真備にも凛にとっても、幸せなカップルを見るのは辛いのだ。
だからこそ、孫と同じ年頃の女の子たちをみる相談者薪岡の気持ちに寄り添える。
過ぎていく時間と足並みを揃え、思い出は徐々に遠ざかっていく。そんな毎日のなかで、胸にたくさんの花を咲かせて暮らしている人もいる。いつまでも溶けない氷を哀しんでいる人もいる。
花と流れ星
平成24年4月15日初版発行
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