井上靖【夏草冬濤 上】
井上 靖 著
税込価格: 620円
出版 : 新潮社
ISBN : 4-10-106333-8
発行年月 : 1989
利用対象 : 一般
しろばんば(12.06.08)に続いて、中学生になった洪作を描く。
洪作は、小学校までそだった湯ヶ島を離れて、沼津の中学校に通っている。
ちょっと悪の三人組の先輩にあこがれたりしているうちに、洪作の成績はどんどん下がっていく。
そうした中学生活の日常が語られていくのだが、3年生の冬休みに、久しぶりで湯ヶ島へ帰郷する。
その時の、郷里を見る目の描き方が好きだ。
幼い頃からずっと育ててくれたぬい婆さんとの暮らしを思い出す洪作。
母方の祖母の優しさ。
やはり、故里は心休まる場所のようだ。
幼い頃見ていた川も淵も、今見るとこんなに小さかったかと驚く。
ぬい婆さんは村の中で評判が悪かったのだが、だんだんおぬい婆さんに似てきたという洪作に、祖母は「本望だ」と言う。(村人が)みんな ぬい婆さんは因業だったと言っているという洪作に、祖母は
そんなことはない。もし悪口を言ったら、言う人の方が間違ってる。洪作を可愛がって育ててくれたいい婆ちゃだった。本当に、あれだけは誰もできることじゃない。いい婆ちゃだった。よく出来た婆ちゃだった。と言う。
洪作は、そんな祖母に暖かいものを感じるのだった。
夏草冬濤 上
平成元年5月25日発行
平成22年5月30日27刷
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