宮下奈都【太陽のパスタ、豆のスープ】
宮下 奈都 著
税込価格: 1,470円
出版 :集英社
ISBN : 978-4-08-771332-9
発行年月 : 2008.9
利用対象 : 一般
暗闇をさまよう明日羽に、叔母のロッカさんは“リスト”を作るよう勧める。溺れる者が掴むワラのごとき、「漂流者のリスト」だという。明日羽は岸辺にたどり着けるのか?そこで、何を見つけるのか?ささやかだけれど、確かにそこでキラキラと輝いている、大切なもの。
婚約者の譲に突然破談を言い渡された 明日羽 (あすわ)。
「太陽のパスタ」とは、ろっかさんが作ったゆですぎた麺にミニトマトを入れたものだろう。
一方「豆のスープ」というのは、あすわの同僚郁ちゃんが「青空マーケット」で開いた店で売っていた、おいしいスープのことだ。
両者を並べてタイトルにするとは…。
この一見関係なさそうな二つがどう結びついていくのかと思いながら読んでいたのだが、特にそういうことではなかった。
あすわの周りにいる人たちが、みな面白くて素敵だ。
幼なじみの、京。「彼は」という言葉が出てくるから、性同一性障害を持っているようだ。
京の専門学校時代の同級生でエステティシャンの、桜井恵。
同僚の郁ちゃん。
同じく会社の先輩、山吹さん。
玄人はだしのレース編みをする、定食屋の主 市さん。
そして何といっても、家族。父も母も、兄も。
打ちひしがれていた明日羽が、やがて少しずつ自分に自信を持つようになっていく課程が、丹念に描かれている。
その際、重要なキーワードになるのが、母の妹であるロッカ(六花)さんに教えられた「ドリフターズノート」というノートだ。
「ムーンリバー」に出てくるというのだが……。
これに色々書き付けていって、その内お守りのようになったとき、恵に「それは出来ないことのノート」と言われて、見つめ直すことになる。
そして、そこからの卒業というのも一つの大きなポイントかもしれない。
最終部分では、仕事を認めて貰ったりマーケットに出店したりと、ややとんとん拍子に話が進んで行きすぎて、連続ドラマの最終回のような様相を呈してくるが、それもご愛敬か。
太陽のパスタ、豆のスープ
2010年1月30日第1刷発行
| 固定リンク
コメント