西田征史【小野寺の弟・小野寺の姉】
西田 征史 著
税込価格: 1,260円
出版 : 泰文堂
ISBN : 978-4-8030-0166-2
発行年月 : 2012.5
利用対象 : 一般
東京の片すみ、木造一軒家にふたりで暮らす、小野寺進と小野寺より子の姉弟。ある日、ふたりは、間違って配達された手紙を届けに行くことにするが…。さえないけれど、ささやかな幸せが香る日常を描いた物語。
何か読もうと思った本は、どなたかの紹介だったりどこかで書評があったものが多い。しかし、本書を読もうと思ったきっかけは、思い出せない。
それはともかく、「小野寺の弟」というからには「小野寺」君か「小野寺」さんがいるわけで、「小野寺の姉」というからには、やはり「小野寺」さんか「小野寺」君がいるのだろう。
ということは、兄弟は三人以上! ではなくて、姉弟二人がそれぞれの「弟」であり「姉」なのだ。つまり、誰かから見てよく知っている方(女性)の「弟」であり、「あの小野寺君」の「姉」というわけである。
などとくだらぬことを書いているが、本書はその二人が交代で語っていく、何の変哲もない物語だ。
時計屋に勤めている 40を過ぎた姉と、30代半ばの弟。不思議なことに、他の家族の話題は出てこない。いや、一度だけ出てきたかな?
弟は姉を気遣い、暴君的な姉も、心から弟を愛している。
この二人が日常遭遇する平凡な日々を綴っているに過ぎないのだが……。
弟はつきあっている女性がいて、姉とも仲良くしていた。だがいざ一緒に住むという時になって、破局が訪れる。よくある「私とお姉さんとどっちが大事」的なことで。
この辺を読んでいるときには、これって「母一人、子一人」の話と一緒だなと思った。
だが、やはり切ない。
家族との共有時間は、それ以後現れた人物よりもはるかに多いのだから。
以前東野圭吾【赤い指】でも感じたのだが、あとから参入する者は、当然そうした家族の絆を知らない。頭では理解しているつもりでも、踏み込めないものを感じて疎外感を持つのかもしれない。
小野寺の弟・小野寺の姉
2012年3月2日初版第1刷発行
| 固定リンク
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 江口恵子【普段使いの器は5つでじゅうぶん。】(2025.03.21)
- 堂場瞬一【英雄の悲鳴 ラストライン7】(2025.03.19)
- 篠田真由美【センティメンタル・ブルー】(2025.03.17)
- 【くらべて、けみして 校閲部の九重さん】(2025.03.13)
- 【Casa BRUTUS特別編集 器の教科書】(2025.03.11)
コメント