鮎川哲也【完璧な犯罪】
鮎川 哲也 著
税込価格:700円
出版 :光文社
ISBN :978-4-334-76569-9
発行年月 :2013/05/03
利用対象 : 一般
人気推理作家の夫から、愛人が妊娠したことを喜びとともに知らされた妻・多鶴子。夫の殺害を決意し、完全犯罪を企てたが…。「小さな孔」など傑作ミステリー6編と、文庫未収録2編の計8編を収めた短編集。【「TRC MARC」の商品解説】
最初の【小さな穴】を読んでいるときから、犯人に肩入れしてしまって、これが完全犯罪にならないのは辛いなと思っていた。
被害者には、これっぽっちも同情できない。
そして、最後はどうなったのか?
出来れば、公にはうまく隠しおおせたらいいのに。
二番目は、【或る誤算】。
これも、被害者の「悪者ぶり」が執拗に描かれている。恐らく、著者はそのあたりも計算しているのだろうが。
但し本作では、最後の刑事が訪ねてきたとたんに、ベラベラと聞かれもしないことをしゃべりすぎ。
三番目の【錯誤】では、なかなか事件が起きない。ちょっと意表を突いた展開。
しかし一旦殺意を固めてからは、上の二作と同じような展開になる。
と思いきや、今度は動機が今ひとつかな。
また、犯人への同情は、上記二篇ほどには沸かない。
その次になると、今度は犯人の身勝手さが出てくる。
何も落ち度のない被害者に黙って勝手なことをして、糾弾されると殺害してしまう。
これは、全く同情の余地がない。
いずれも小さな瑕疵から綻びが出てくる。
事故で近所一帯が停電になり、扇風機が止まってしまった。再び通電したことで、殺害時刻を狂わすはずがばれてしまう。
所詮、他人のことは表面からだけでは分からないことが多いのだ。
メニューを見ないのはキザだからではなく、老眼を知られたくなかったのだとは……。
万年筆で長い時間書くためには、インクの補給がいる。そのこと一つでさえ、計算外になる。
さて、「わーらーべーはーみーたーりー……」で始まる「のばら」という歌曲では、どういうメロディーを想像なさるだろうか?
これが大きなヒントになる、【わらべは見たり】。
急ごしらえのアリバイは、思わぬところからボロが出る。
といった風な、短編集によくあるのだが、割合似たような展開で全部で八編。
しかし、なかなか面白かった。
完璧な犯罪 Kindle価格・honto価格:683円
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