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2014.08.28

泡坂妻夫【煙の殺意】

煙の殺意泡坂 妻夫 著
税込価格:1,365円
出版:PHP研究所
ISBN:978-4-569-70039-7
発行年月:2008.9
利用対象:一般

 

ん?あれ……? わっやられた!! ミステリ好き必読 問答無用の傑作短編集【本書 帯】より

 

表題作【煙の殺意】始め、8編の短編集。

 

【赤の追想】は、予想されるラスト。
女の気持ちは、女には解る。哀れなるかな、自死した航一。

 

【椛山《かざん》訪雪図】は、芸術的なお話だ。

 

事件そのものは、ストーカーと化した男の失恋から来たのだが、驚くべきだまし絵が隠されていた。それも、目の錯覚から感じるよくある例ではなく、状況によってまさにタイトル通りになるという仕掛け。

 

 

【紳士の園】は、出所したばかりの二人が、桜咲く公園で「スワン鍋」なるものを楽しむという設定。ハプニングが起きたのだが、翌日メディアは何も触れていない。というお話。
このテレビやラジオの「報道」が、一つの伏線になっている。で、「もしかしたら」というのは当たっていた。

 

 

【閏の花嫁】は、突然姿を消した友人が、地中海の島の王妃になると知って驚くところから始まる。
その友人との往復書簡。

 

そのまま、予想された展開をしていく。
昔の王妃の、「献身的な働き」というのも見当が付く。
ぞっとする話だ。

 

 

そして、【煙の殺意】

 

なんと見事な題名だろう、煙が起こした殺意とは。
アパートの部屋の、殺された女性の死体。
一方テレビは、大きなデパートの火事を報じている。その現場は、アパートからも伺える。
両方の事件を交互に描きつつ、「煙」が起こした殺意へと誘(いざな)っていく手法。

 

 

【狐の面】は、好きな作品だ。

 

話は、鉱山の村へやってきたインチキな山伏集団を寺の住職が対峙・退治する話なのだが、生き物の使い方がうまい。
最後の、殺されかけた女性の後半生が幸せそうでよかった。

 

 

【歯と胴】

 

これまた、怖い話。
解剖学の現場も登場する。被害者に同情の念が沸かないどころか、やはり犯行が露わになるのだなと、少々残念(?)

 

 

最後の【開橋式次第】は、ちょっとふざけた設定だ。

 

5世代揃った警察署長の面々が、新しい橋の渡り初めをするという日の朝の騒動から始まる。
式典へ向かう途中で、 年前と同じ状況の殺人事件が起こっている模様。署長は式典中も気が気でない。
その事件の犯人を、ちょっとした言葉をヒントに9 歳の長老が見事当てるというもの。

 

これなどは、正当な(?)謎解きと言える。

 

 

いずれも、面白い探偵小説だった。
こんなのは、ここのところ読んでいないような気がする。

 

煙の殺意

 

 

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