天藤真【遠きに目ありて】つづき
天藤 真 著
税込価格:778円
出版:東京創元社
ISBN:4-488-40801-X
発行年月:1997.9
利用対象:一般
成城署の真名部警部は、とある縁で知り合った岩井信一少年の聡明さに驚嘆し、目下の難事件“多すぎる証言の問題”の経緯を話して聞かせたところ……!?
電書の残念なところは、文庫版を元にしていても「解説」がつかないことである。
古い本だが、図書館に文庫本があった。
そして解説は、後藤安彦氏、仁木さんの御夫君である。
著者夫妻と仁木夫妻の交流にも触れておられて、じんとくるものがある。
本書の元になったという【青白い季節】は読んでいるが、どんな話だったかな?表紙にネコの絵があったのは確かだと思う。
本書の短編の内、
第一話の【多すぎる証人】は少し散漫な感もあるが、主婦たちのチームワークが気持ちいい。
第二話【宙を飛ぶ死】は、何とも嫌な犯人であった。
ここでも信一少年が謎を解く。
終盤、警部が信一を警察署へ連れてきて「感謝状」なりをもたらしたいと思うのだが、バリアが多くて無理だと悟る。石段・敷居、車いすでは越せない。
それが現実であった。犯罪だけではなかった。信一も、かれ警部も、戦わねばならない相手は、まだまだ無数にあるのだった……。
この「障害」が、徐々に解きほぐされていくのが興味深い。
署の刑事たちは、岩井家にいる警部を訪ねたりしている内に、信一と仲良くなる。
その最初の刑事戸間に対して、警部は彼の(信一を見たときの)驚愕に配慮する。しかし戸間はこともなげに言うのである。姉の子が障害児で、その子と一番の仲良しなのだと。
そして、彼が外へ出られる工夫を、色々考えるのである。
「移動車」も、
第三話【出口のない街】の頃から
第四話【見えない白い手】ではグッと進歩している。
この【見えない白い手】の犠牲者しのぶは、どうしようもない甥っこにつれなくしているようで、実は大きな愛情を持っていた。知らない「バカ」は……。まっったくもー。
第五話【完全な不在】は、俳優というものの完全な演技を見せてもらった。
二人の役者に、拍手!
遠きに目ありて
1992年12月25日初版
1994年6月10日4版
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