西炯子【お父さん、チビがいなくなりました】
西 炯子 著
税込価格:463円
出版:小学館
ISBN:978-4-09-137439-4
発行年月:2015/09/10
利用対象:一般
3人の子供が巣立ち、人生の晩年を夫婦二人で過ごす、菜穂子(37歳)の両親。平穏な暮らしを送っているかと思いきや、突然、母が離婚を考えていると言い出した。
娚の一生の西 炯子さんの本。
西 炯子はTwitterでフォローしているのだが、なかなか面白いTweetが多い。
猫好きだなと判るのだが、本書もそのネコが狂言回し的な役をしている。いや、救いの神かもしれない。
奈穂子の視点から見た話と、老夫婦の生活をほぼ交互に描く。
(別れた相手と)結婚するつもりで買ったマンションで暮らす奈穂子自身の職場でのことや、恋愛も絡めている。
何を話しかけても、応えてくれない夫。妻は話し好きで、しょっちゅうネコに話しかけている。
その二人の若い頃の話や、妻の同僚と夫とのことも出てくる。
ご近所の夫婦が旅行へ行くのをうらやましがって話す妻。反応の無い夫。
しかし、妻が友人と鎌倉へ行くと話しかけたとき、『あのな』と言いかけた夫は、一泊旅行の当たり券を持っていたのだった。
「声にしなくても判るはず」という日本の男たちの典型のような夫だ。
そしてついに、妻は丁度帰ってきていた奈穂子に、『離婚したい』とまで訴える。
慌てた奈穂子は結婚している兄や姉に相談するが、ただ見守るしかない。
自分の両親も、同じような夫婦だったなと思い出す。
おしゃべりな母と、寡黙な父。この一家もそうだが、子どもたちも父親とあまり話したことがない。
それでも、父の若い頃のアルバムに、母の写真と添え書きに「Tさん」と母の名が書かれているのを見て、おやっと思ったことも思い出した。
ちょうど妻が奈穂子に離婚のことを話した頃から、ネコのチビがいなくなる。
必死で探す妻。「もう死んでいるに違いない」とつれない夫。
この辺で、妻の忍耐が限界に達したのかもしれない。
結局は、夫も自分の心情を話すことで、危機を脱するのだが。
番外の4コマ漫画で、妻が夫の『おい』で何を求めているのか判る(お茶や爪切り)のと同じように、ネコが『ニャーオゥ』と鳴くと『はいはい ごはんね』『はいはい なでなでね』と応じているのを、夫がブスッと無言で眺めているのがおもしろかった。
かくして、日常はまた元通りのようだ。
この人の本、好きだな!
お父さん、チビがいなくなりました
honto価格:432円
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